”油絵の基本的な描き方”ってどうやるの?
もっとリアルに、鮮やかな風景画を描きたい。なんて悩んでおられませんか。
特に、独学で描いている方には油絵の基本を知りたいと思っておられる方が多いのでは。
私自身そうでしたが、基本を知らないままにやっている方も多いかと思います。
油絵の基本的な描き方”について、わかりやすく解説しています。
リアルで鮮やかな絵を描くには!
”油絵の基本的な描き方”
油絵といえばゴッホが有名なので、ペインティングナイフなどを使って大量の絵の具を盛り上げて描くのが基本のように思いがちです。しかし、これはどちらかというと特殊な描き方です。
油絵は長い歴史がありますので、さまざまな技法が生まれており、基本を知っておくことはとても大事なことです。
基本を知り、システマティックにルールに乗っ取って描くと、初心者の方でも驚くほどリアルで鮮やかな絵を描くことができます。
油絵の描き方
・基本中の基本はこれ
油彩画の描き方の基本は次の3項目です。
- 中間トーンから描き始める
- 明るい部分は不透明で暗い部分は透明色で描く
- 「明暗を持たせる」そして「固有色をつける」の順番で描く
- 固有色で一気に鮮やかにせず、薄く塗り重ねていく。
りんごの絵をベースに油絵の描き方を順に説明していきます。
❶インプリマツーラ
トランスペアレントバーントシェンナとイエローオーカーを混ぜて、はけで下塗りをします。これによって、鉛筆などで描いた下書きを定着させます。
全体の中間の明るさで塗ります。
❷明暗をつける
溶き油はペインティングオイルにテレピンを多めに混ぜたものを使います。乾燥が早く、流動性も良いので、制作初期に適しています。
暗い部分を描く
古典的な描き方では、制作序盤は褐色系の絵の具で明暗を捉えます。モティーフの光と影の形を捉えてセピア状に描いていきます。
バーントシェンナだけでは鮮やかすぎるので、アイボリーブラックを加減しながら混ぜます。溶き油を多めにしてサラサラにして、濃い絵の具でなく薄い半透明な絵の具で、褐色で色幅を出していきます。
これが古典的な油絵の基本です。
薄く何層も塗るのが基本で、一層塗ったら乾くのを待ちます。
塗る時は影の形を意識して形を刻みながら色幅を増やすのがポイントです。地塗りを全体の中間の明るさにしておくと効率的に色幅を増やしていけます。
影の部分のさらに暗い部分を透明なセロハンを重ねるように何度か塗って色幅を作っていきます。できる限り筆跡が残らないようにフラットに、モチィーフの形に沿って塗ることが大事です。
明るい部分を描く
地塗りよりも一段階明るい色を不透明な絵の具で塗ります。少量のカドミウムイエロー、イエローオーカーとシルバーホワイトを混ぜて、やや明るく、やや鈍く、やや黄色っぽい色を作って塗ります。
次に明るいゾーンの、さらに1段階明るい部分を塗ります。少量のカドミウムイエローとシルバーホワイトで色を作ります。絵の具が硬すぎると筆跡が残って緻密に描けないので適度に溶き油を混ぜます。必要によりさらに塗り重ねます。
暗い部分と明るい部分を交互に繰り返して段々と立体感を持たせていきます。
ここまで終了するとほぼ立体的な絵になっているはずです。
❸固有色を重ねて塗る
溶き油には、ペインティングオイルに揮発油を少し混ぜたものを使います。
褐色系でモノトーン状に描かれた上に、次のように鮮やかな透明色を重ねていきます。
溶き油多めで何層も塗り重ねていきます。
③-1「固有色を塗る」
「りんご」ではモティーフの固有色であるアリザリンクリムソン(透明色)を薄塗りします。
これをグレーズといいます。明暗の境界線付近からはじめ白いハイライトを避けて塗っていきます。
透明色を塗り重ねる時はできるだけ塗りむらが出ないように丁寧に塗ります。また、 徐々に鮮やかにすることで立体感を損なわずに鮮やかにすることができます。
③ー2「暗いゾーンは青っぽく」
暗いゾーンはやや青っぽく描くと自然に見えるので、りんごの影を赤紫で再現します。
キナクリドンマゼンダ+ウルトラマリン+アイボリーブラックで赤紫を作ります。
鮮やかになりすぎないように注意しながら、塗りむらが出ないように細い筆も使います。
③-3「明るいゾーンをさらに鮮やかに」
明るいゾーンにも鮮やかな固有色を塗ります。いきなり鮮やかにすると立体感が壊れるので少しだけ白と黄色を混ぜた赤を塗ります。
カドミウムイエロー+カドミウムレッド+シルバーホワイトで鮮やかな赤を作ります。
明るい部分はやや黄色っぽく塗ると自然に見えます。
明るいゾーンは不透明な絵の具でマットに、明るい光を意識して塗ります。最も明るいハイライトの部分を避けて塗るようにします。
❹制作中盤 細部を描きこむ
溶き油は、製作中盤にはペインティングオイルのみに変えます。
制作の中盤は明るいゾーンを中心に、次のようにモティーフの微妙に異なる色をパレットで作っては塗る作業を繰り返します。
④-1「赤と白の段差の解消」
モチーフの真っ赤な色とハイライトの白の間の段差が画面を見づらくするので、両者の間の色である明るいオレンジを塗ります。
(カドミウムイエロー+カドミウムレッド+シルバーホワイト)
④-2「りんごの斑点などを塗る」
モティーフの細かい表情も塗ります。
りんごの斑点などの細かい表情は明暗の境界線付近に現れます。この時点で、大まかな表現はできていると思います。
④-3「鮮やかさと細かさの両立」
ここからは鮮やかさを上げながらさらに細かい情報を盛り込んでいく作業になります。
- 明るい部分はやや鈍くオレンジぽくします。(カドミウムイエロー+カドミウムレッド +シルバーホワイト)
- りんごのハイライト付近の明るい紫を塗ります。(キナクリドンマゼンダ+カドミウムレッド+シルバーホワイト)
- 影の形のエッジを弱くするために、塗ってある物よりも若干明るい影色を作って境界線付近に被さるように塗ってピンボケ状態にします。
(アリザリンクリムソン+シルバーホワイト+アイボリーブラック) - りんごの斑点に再度固有色を塗ります。
(カドミウムイエロー+フタロシアニングリーン+シルバーホワイト)
❺仕上げ塗り
溶き油を仕上げ用に変えます。乾性油を加えて透明感のある仕上がりにします。
(ペインティングオイル+リンシードオイル+ダンマル樹脂+ホワイトシッカチーフ)
製作の終盤は、「暗いゾーンを透明色で暗く鮮やかに仕上げ、不透明色でモティーフの明るいゾーンを描きおこす」、この動作を満足がいくまで続けます。
- ハイライトの部分に透明色 ・キナクリドンマゼンダを塗り重ねていきます。最も明るいゾーンが鮮やかになりすぎると一体感がなくなるので、鮮やかになりすぎないように注意します。
- 明るいゾーンにやや鮮やかな色を塗ったので影の中が相対的に鈍くなったので、影の部分をアリザリンクリムソンで暗く鮮やかにしていきます。
- 鈍い部分に透明な赤紫色の絵の具(キナクリドンマゼンダ+ウルトラマリンバイオレット)をグレーズして再度調整します。
- 赤紫色をグレーズすると、りんごの斑点が埋没してしまうため、不透明な黄緑と黄色でもう一度仕上げます。(カドミウムイエロー+フタロシアニングリーン+シルバーホワイト)
これで完成です。
❺保護用のニス
通常は半年から1年おいてからニスを塗ります。
タブロースペシャルは表面が乾燥していればすぐに使えますので、展覧会前などに便利です。タブロースペシャルにテレピンを若干加えて塗りやすいものにして使うとよいです。
羊毛のはけで画面全体に均一にぬります。実際、乾燥は早いですが、しばらくの間は匂いがきついので、ほこりのない部屋で1週間程度、保管するようにしましょう。
価格:935円 |
参考資料
Youtube「絵画をたしなむ」のチャンネルの次の動画を参考にさせてもらいました。この動画に準じてりんごを描いてみてください。
最後に
説明は以上ですが、細かい作業までは、わかりづらいと思います。全体の大まかな流れだけでも理解してもらうと良いでしょう。この流れで描くとリアルで鮮やかな絵になるはずです。
次のページも是非ともご覧ください。
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