”油絵の画材と使い方”を正しく知ってますか?
油絵は、水彩、アクリルと比べると、手を出しにくい画材です。
油絵の具で重厚感のある絵を描けるようになるには、画材の知識が不可欠です。
初心者の方でも油絵を始められるように、油絵の画材について解説します。
目次
”油絵の画材と使い方”はこれで十分!
中西繁さんの本も参考にさせていただきました。
油彩画超入門 光と影を描く (The New Fifties) [ 中西 繁 ] 価格:1,980円 |
それでは順に説明していきます。
油絵の具とは
油絵の具は「顔料➕乾性油」でできています。
乾性油とは水分が揮発して固まるのではなく化学反応で固まるものなので、乾燥が遅いです。
油絵の具には、こんな特徴があります。
油絵の具の特徴
乾燥が遅い
アクリル絵の具はパレットに出して放置しておくと短時間で固まってしまいます。一方、油絵の具では、「ちょっと用事を済ませてまた後で描こう」なんてことは、全く問題ありません。それくらい違うという意味です。
このように油絵の具は固まりが遅いので、絵の具を画面上でも混ぜられます。そのため、簡単に微妙なグラデーションを作ることができます。すぐ固まるアクリルではグラデーションを作るには一定の技量と慣れが必要です。
逆に言うと、油絵の具をすぐに重ねて塗ると色が混ざってしまい濁った色になります。そのため、制作に日数が必要であり、それが油絵の具の難点でもあります。
私はこれを補うために、最近は、4~5作品を同時に描くようにしています。ただし後述のメディウムを使うと毎日描くこともできます。
透明度が高い
油絵の具に使われている乾性油は高い屈折率で光を透過するため、油絵具は高い透明度を有しています。
一方、アクリルはマット(べったりと不透明)に塗るのは得意ですが透明感を出すのは苦手です。水彩も水を多めにして見かけ上で透明にしているだけです。
油絵具には透明、半透明、不透明があります。これらを使いこなせるか否かがポイントになります。
不透明色で立体感を描き、透明色を重ねて鮮やかに仕上げることが、油絵の基本です。
最初にそろえる色
下の色が基本的な色なので揃えておいたらと思います。初心者は12色セットぐらいを購入し、少しずつ色を増やしてたら良いでしょう。
ホルバイン社やクサカベ社の絵の具が一般的です。
また、これらの色は基本的な色なので揃えておいた方がいいです。
- カドミウムイエロー(不)
- イエローオーカー(半)
- バーントシェンナ(半)
- カドミウムレッド(不)
- アリザリンクリムソン(透)
- キナクリドンマゼンダ(透)
- ウルトラマリン(透)
- コバルトブルー(半)
- フタロシアニングリーン(透)
- ビリジャン(透)
- シルバーホワイト(透)
- チタニウムホワイト(不)
- ピーチブラック(半)
- アイボリーブラック(不)
※ 絵の具の裏に透明・不透明などの表記があります。
油絵の具の溶き油とは
溶き油の材料
溶き油は初心者には馴染みが薄いですよね。
溶き油とは、水彩絵の具・アクリル絵の具の水に相当します。絵の具を薄めたり、なめらかに描きやすくするために使います。
しかし水代わりなので何でも良いというわけではありません。
適切な溶き油を使うと絵の出来が違ってきます。大事な画材の一つなのです。
溶き油には、次のものを混ぜて使います。
揮発油
とても乾燥が早く、制作の序盤に使います。筆を洗う時にも使えます。
乾燥すると艶が無くなるので、終盤になると減らします。
テレピンがポピュラーです。
乾性油
油絵らしい重厚な透明感が得られます。乾燥が遅く、使いすぎると若干黄色っぽくなります。
乾性油を多く混ぜると乾燥が遅くなって絵が進まないので、乾性油を使う時は樹脂も混ぜて使います。
リンシードオイルがポピュラーです。白っぽい絵や青っぽい絵を描く時は黄色くなることを防ぐためポピーオイルを使います。
樹脂(ワニス)
樹脂は乾燥が早いです。艶が強いので、あくまで補助的に使います。
油絵は基本的に乾性油で描く絵画ですが、乾性油だけだと乾燥が遅くて時間がかかりすぎるので、補助的に樹脂や揮発油を使います。
使いすぎるとプラスティックのような質感になるので要注意です。ダンマルワニスがポピュラーです。
乾燥促進剤
乾燥を早めます。数滴だけで良く、あくまで補助的に使います。
ホワイトシッカチーフがポピュラーです。透明なので淡い色でも使えます。
溶き油の調合と使い方
溶き油の調合によって、制作時間や仕上がり美観に違いが出るので、使い方を知っておく必要があります。
溶き油の調合や使い方は次のとおりです。
次のようにすると油絵らしい重厚感と艶のある絵を描けますので、やってみてください。
油絵の具にも乾性油が含まれていますので、油絵の具だけで溶き油を混ぜずに描くこともできますが、乾くと艶がなくなりがちです。
溶き油の調合
- 制作序盤;
下描きには揮発油のみを使って、キャンバスの下地にしっかりと絵具を染み込ませます。 - 制作中盤;
揮発油5:乾性油4:樹脂1 - 仕上げ;
揮発油4:乾性油5:樹脂1:乾燥促進剤(数滴)
何種類も溶き油を作るのが面倒な場合には下のようなベーシックな溶き油を作っておき、それに揮発油や乾性油を加えて使用します。若干の配合違いは問題ありません。感覚で!
ベーシックな溶き油
- ベーシックな溶き油;
揮発油5:乾性油4:樹脂1:乾燥促進剤(数滴)
それも面倒な場合には、ベーシックな溶き油に市販のペインティングオイルを使って、制作序盤には揮発油を加えてもよいです。
ペインティングオイルは揮発油、乾性油、樹脂、補助剤が程よいバランスで調合されています。
溶き油の使い方
溶き油は蓋のついた瓶で調合・保管し、その日に必要な分を絵皿などに入れて使います。
専用の油つぼは手入れが大変なのでおすすめしないです。
ただし、揮発油が飛ばないように絵皿をラップしておきましょう。制作中に匂いが拡散しないので助かります。
油絵の具のメディウム
パレットの上で絵具と溶き油に混ぜて使います。以下のように様々な役割のメディウムがありますが、どれも乾燥を早めます。
- ガラスのような光沢を出す
- サテンのような光沢を出す
- 透明感を上げるもの
- etc.
絵の具1に対してメディウム1未満で使用します。混ぜすぎるとビニールのような質感になります。
油絵の具は、絵の具事態の性能が高いので、アクリル絵の具と違って、初心者の段階ではあまりメディウムを必要とはしません。
乾燥促進 オレオパスト
最初の1本としてオレオパストがおすすめです。
色味や質感を損なわず乾燥を早めてくれます。翌日には乾いているので毎日描けて助かります。
使った筆を長時間放置すると固まってしまうので、いつもより早めに洗ってください。
油絵の筆とナイフ
油絵の場合には、筆を洗うのが手間です。
かといって何色も使い回すと絵の具が濁ってしまいます。
色を変える度に洗っていては作業が進まないので、その時に使う色かずだけの筆が必要になりがちです。
また描きやすいように、筆の毛の硬軟、毛先の大きさや形を変える必要もありますので、結構な本数になったりします。
筆は高価ですので、最初から多くを揃えずに、絵を描きながら、自分の絵に必要な筆を少しずつ揃えていけば良いです。
油絵の筆は丁寧に扱えば割りに長期間使えます。
毛の硬軟
剛 毛
印象派のように絵の具をガシガシ厚塗りする時に使います。
粘度が強い状態で絵具を塗る場合には、腰の強い筆が必要です。ナイロンや豚毛が安価です。
軟 毛
古典絵画のようなデリケートな絵を薄塗り(溶き油多め)で描く時に使います。
私は水彩画やアクリル画の筆も使っています。
毛先の形
まる筆
先端が丸くなっているものです。
リガー(面相筆)
先端が尖っています。細い線を描く時に使います。
平 筆
一本の筆で広い範囲が塗ることもできますし、細い線を描くこともできます。
平丸筆
剛毛はこれが多いです。
ファン
先端が広がっています。私は葉っぱを描く時に使っています。自然な雰囲気が出ます。
少し慣れたら使ってみてください。
刷 毛
地塗りで広範囲を一度に塗る時に使います。
筆の洗い方
まずキッチンペーパーやティッシュペーパーで筆先についている絵の具を拭き取ります。
そしてブラッシュクリーナー液で洗います。
制作途中でササっと洗いたい時にはテレピンを使います。テレピンは高価ですが、絵の具の落ちがよいです。
クリーナ液だけでは不十分なので、そのあと石鹸で良く洗い、最後に流水で流します。
「ウニアトリエ」の動画
ペインティングナイフ
ナイフにはペインティングナイフとパレットナイフがあります。
特に決まりはないので描く時にパレットナイフを使っても良いですし、絵の具を混ぜるのにペインティングナイフを使っても構いません。普通は先が尖っているものをペインティングナイフと呼んでいます。
ナイフで塗ると独特の質感が得られます。
一般的には、ナイフのヘラの部分で壁の小手塗りのように塗りますが、側面で線を描く時にも使います。
また、一度塗った色を削り取る時に使う画家もいます。私は、下の4本を使っています。お好きな形を選んで使ってみてください。
油絵の支持体
支持体の材料
張りキャンバス
木枠に布を張った張りキャンバスが一般に使われています。
布には麻、綿、化繊が使われています。プロは伸縮がない麻を使っているようです。
特殊なサイズの場合は自分で木枠を組み立ててロールの布を張らないといけませんが、通常は市販の張りキャンバスで間に合います。
大きいサイズはネット購入がおすすめです。
パネル
木枠にシナベニアなどの板を張ったものです。板は緻密な絵を描く時におすすめです。
私は、最近、小作品ではパネルを良く使います。
小パネルの場合には、ホームセンターで木材を買ってきて、自分で作っています。
油絵 下地塗り
キャンバスやパネルには通常下地塗りを施します。
市販の張りキャンバスにはあらかじめ地塗りされていますので、自分で地塗りしなくてもよいですが、キャンバスの目地をつぶすため、またローラ跡などでマチエール(質感)を得るために通常は地塗りをします。
地塗りの簡単な方法は、アクリルジェッソを使うことです。刷毛やローラを使ってキャンバスやパネルに塗ります。
キャンバスの目地や板目をつぶしたい時には、3〜4回重ね塗りします。
刷毛やローラの跡をマチエールとして利用しても良いですし、完全に乾いてから紙ヤスリで磨いて表面を滑らかにすることもできます。
ジェッソの色は白を使うことが多いです。カラーもあります。
ジェッソは粒子の大きさによって、「超微粒子タイプ」から「極素粒子タイプ」があります。緻密な絵を描く場合には、「超微粒子タイプ」が良いようです。
「絵をたしなむ」の動画
油絵の具のパレット
紙パレットが便利です。描き終わったら、剥がして捨てるだけです。パレットの手入れが不要です。
私は、紙パレットも使いますが、ホームセンターで購入した、やや大きめの白いアクリルボードを主に使っています。
良く使われる木製パレットは絵の具の色味がわかり辛いので最近は使っていません。
オリジナル ペーパーパレットS大半型 あす楽対象[メール便:50](絵具 新学期画材セット 撥水 ネイル 絵具 使い捨て アクリル絵の具 油絵具 紙パレット 文具) 価格:380円 |
油絵の具の混ぜ方
絵の具は、パレット上でナイフで混ぜます。筆で混ぜると混ざり切らないので、ナイフを使うと良いでしょう。
ナイフ2本を使うようにし、1本で混ぜ、もう1本でこそぎ落とします。
逆に、絵の具を混ぜ切らないで塗ると、違った良さを得られます。
筆で混ぜても良いですが、絵の具がマーブル状になったり、筆にダメージを与えることがあります。
最後に
以上が油彩画で使用する材料とその使い方です。次回は油彩画の描き方の基本をまとめますので、そちらも参考にしてください。
油絵について別のページでさらに詳しく取り上げていますので、是非ともそちらもご覧ください。
私は油彩でこんな絵を描いています。
また、他にもいろんなカテドリーについて投稿しています。
ホーム画面からお立ち寄りください。