”色相・明度・彩度”(色の3属性)ってご存知ですか?
初心者の方、立体感のある鮮やかな絵を描けないと悩んでおられませんか?
実は、色相の3属性を使いこなして混色・重色しないと、そんな絵を描けないのです。
スキルアップのため、是非ともご一読ください。
”色相・明度・彩度”を生かして、混色・重色で描くには!
まず色の3属性”色相・明度・彩度”とは何かを知ってもらいます。
そして、それを混色や重色に生かして、立体感がある鮮やかな絵を描くまでの過程を、解説していきます。
これらは、水彩画、アクリル画、油絵に共通していることです。
”色相・明度・彩度”とは
色相とは
色相とは、色相環をイメージするとわかりやすいです。赤、橙、黄、緑、青、紫といった色の様相の違いです。
りんごの赤、草原の緑に代表されるように、物の固有色とも言います。
色相上では黄色が一番明るく、紫が最も暗いです。
補色の不思議
色相環上で向かい合う位置にある色同士を補色関係と読んでいます。
例えば、黄色と紫、赤と緑は補色の関係にあります。
補色同士を並べるとお互いの色を引き立て合います。
これは、絵画を描くときは大変重要なことです。
下は制作段階の絵の一部です。
この絵の良し悪しは抜きに、補色の一例としてご覧ください。🤗
この絵は緑が主体ですが、何か物足りなくて補色であるアリザリンの赤を少し配置してみました。葉っぱや樹木が引き立ってきたように思います。
補色は隠し味として忍ばせて使っても良いです。色々と試してみてください。
下手に使うと統一感のない不自然な絵になってしまうので注意してください。
まだ製作中の絵ですが、補色の関係の例として取り上げました。
私は、緑と赤が好きなので、自然と補色になるのかも(笑)
色相使いのワンポイント
色相上では、最上段の黄色が一番明るく、坂段の紫が最も暗いのです
だから明るい部分ほど、色相を黄色に近づけ、暗い部分ほど、色相を青紫に近づけると自然な印象の絵を描けます。
明度とは
明度は明るさの度合いです。モノクロにするとわかりやすいです。
すなわち、白は明度が高く、黒に近づくほど明度が低いのです。
鉛筆デッサンは、この明度だけで表現する手法です。
これに固有色が付くと色相と明度が合わさります。
下はスーラの絵をモノクロに加工したものと元絵です。モノクロにすると明度の違いが一目瞭然でしょ。
私は、絵画制作段階でも、時々こんなふうに絵を写真にとりモノクロ加工して明度の確認をしています。というのも色が乗ると、色相の明暗に誤魔化されて明度を誤る可能性があるからです。
このように近いところほど、明度の差を大きく、遠いところは明度の差を小さくぼんやりと表現しています。
彩度とは
彩度とは、色の強さや、鮮やかさの度合いを言います。
といってもわかりにくですよね。
手短にいうと、赤や青といった原色は彩度が高いです。
一方、白黒やグレーの彩度は0で無彩色と呼ばれています。
原色に、白黒やグレー系の色を混色すると彩度が低くなって行きます。
下の図がわかりやすいでしょう。彩度と明度の関係もわかる図です。
”色相・明度・彩度”を自在に操る
明暗は割りに表現しやすいですが、彩度はなかなか感覚的に理解しにくいですね。
しかし、明度に敏感でも彩度に鈍感ではだめなんです。
例えば、明るい箇所にいきなり鮮やかな色(高彩度)を塗ると立体感を損ない、ポスターのような絵になります。立体感と鮮やかさを両立するには、明度と彩度を自在にコントロールできないといけません。先程のスーラの絵を見ていただくと理解しやすいかと思います。
これが色をあやつる第一歩なのです。
明度と彩度の捉え方
私は、こんなふうに教わりました。
次のように明度を3段階に分けて捉えることで、それぞれにあった彩度を設定する方法です。
①明るいゾーンを低い彩度(鈍い)に描く
②中間の明るさのゾーンを高い彩度(鮮やか)に描く
③暗いゾーンをやや高い彩度(やや鮮やか)に描く
①について解説
明るいゾーンは光の中なので白っぽくて彩度が低いのです。固有色にシルバーホワイトやイエローを混ぜて鈍い色にします。
②について解説
中間のゾーンはモティーフの色がはっきりと鮮やかに見え、モティーフの質感もはっきり出ています。だから原色を使って鮮やかに表現します。
中間の明るさは明るすぎず、暗すぎないので最も情報量が多いのです。(細かいところまで鮮やかに見えるということ)
③について解説
雲一つない地面の影は彩度の高い青をしていることが多いですし、モティーフの影の部分も周囲の反射光が入り込んでやや鮮やかな青をしています。
暗いゾーンは、中間の明るさまででもないですが、結構鮮やかなのです。透明な青を、混ぜたり重ねて青っぽく鮮やかに描きます。
まとめ
①、②、③の関係を守ることで、立体感と鮮やかさを両立できるのです。
非常にわかりやすい方法ですが、実際に理解して絵にするのはなかなか一苦労です。
なお、①と②を隣り合った色相で描くと、色味が似ているので、絵に統一性が感じられ、自然な配色になります。補色の関係にすると、際立って強調されます。
風景画の場合には大胆に色を変えるわけにもいきませんが、心かけておくと良いでしょう。
失敗例
明るい部分の彩度を、中間の部分よりも上げすぎると、光を感じないべったりした印象の絵になります。光は白っぽくて彩度が低いのです。
また暗い部分を真っ黒に描いてしまうと印刷物のようになります。
印象派の画家たちは影に彩度の高い色を使っていますよね。
混色と重色とは!
水彩画・アクリル画・油絵を描く時には、混色、重色ともに、どちらも必要なアプローチです。
とは言え、どちらも、上手に使いこなすには一定の訓練が必要です。
いずれにしろ、基本の考え方を知っておくと、上達が早いです。
混色とは
混色とはパレット上で狙った色を作って、下の色に透けないように描くアプローチです。
この場合には、イメージよりも明るめに作るのが基本です。
それは、絵画は壁に飾りますし、描く時にも立てかけて描くことが多いですが、パレット上の色はそんな状態よりも、光を反射して若干明るく見えるためです。
要は、狙い目よりも暗めの絵になってしまいます。
ところで、公募展に出品する絵の場合、美術館などの展示室は普段描いている部屋よりもかなり暗いところが多いので、混色に限らず明るめに描いておくことをおすすめします。(恥ずかしながら私の失敗談です)
光の当たった明るい色の作り方
風景画を描く時には、光が当たった明るい緑を描くことが多いです。
この時、「緑+白」で混色すると、白っちゃけて彩度の低すぎる緑になってしまいます。色相の欄で取り上げましたように、これに明るい色相の黄色を混ぜて自然な明るい黄緑を作りましょう。
これは、明るい赤でも同じことです。
やはり「赤+白」だけですと、ピンク色になってとても自然の色とは思えない色になってしまいます。これに黄色を足して、オレンジぽい色にすることで自然の色に近づけることができます。
狙った色を作るには
実際、自然の中には、微妙な色もたくさんあります。そんな色を忠実に再現するのは大変難しいことです。
そんな時は、まずやや明るめ、やや鈍めに色を作ります。
そして、色の3属性の面から、作った色と狙いの色を比べて、色を足していきます。
- 明度:明るいのか暗いのか(ホワイトorブラックを加える)
- 彩度:鈍いのか鮮やかなのか(ホワイトorブラックor固有色を加える)
- 色相:黄色を足すべきか、青を足すべきか
いうふうにすると、狙った色を作りやすいので、試してみてください。
重色とは
先程の混色だけでも、ある程度、立体感と鮮やかな絵を描くことができますが、やはり限界があります。
混色の限界について
なぜ混色だけでは限界があるのでしょうか?
最初から完璧に色を作って塗れば、良いのでは?
と、疑問を持ちますよね。
その最大の理由は、立体感と色彩を同時に意識して色を塗るのはどんなプロでも大変難しいからです。
色味だけでも結構頭がいっぱいですので、立体感まで加わると、人間の脳は混乱してしまいます。これに画家のアレンジまで加わるともっと混乱します。
そのため、真似るだけになるので写真ぽい絵になりがちです。
またパレット上で、いろんな色を作る必要があるため効率も悪いです。
致命的なのは、実際、パレット上の混色では全ての色を再現することはできないのです。
それは、絵の具は混色すると鈍く、暗くなり、彩度と明度が下がるためです。どんな鮮やかな絵の具同士を混ぜても、鮮やかな混色を作れないのです。
以上の理由から、混色だけで鮮やかな絵を描くことには限界があるのです。
そこで重色の登場です。
重色のアプローチ方法
重色はすでに塗ってある色に半透明な色を重ねて、下の色を感じさせながら目指す色に近づけていくアプローチです。
重色は次のように進めます。
- 明るめ鈍めに立体感重視で描く
- 透明色を重ねて暗く鮮やかに仕上げる
①は混色のアプローチでパレットで作った不透明な絵の具を用いて、立体感を得るというものです。
①のプロセスで、まず明暗や立体感を不透明な絵の具で出しておきます。
ポイントは、透明な絵の具が重なった時にちょうど良いようにやや明るめ、やや鈍めに描いておくことです。
②が重色のプロセスで、半透明で鮮やかな絵の具を塗り重ねて鮮やかに仕上げることです。
モティーフの鮮やかな色を追加していきます。なお、透明色を重ねる時は、下に描いたものが残るので雑に描かないでください。
そして「明るい部分の形を不透明で描写 ⇄ 暗い部分に透明を重ねる」これを満足がいくまで続けるのです。
このプロセスはグリザイユ技法が元になっています。
グリザイユ技法とは
グリザイユ技法とは、モノトーンで立体感を描ききり、その上で透明な鮮やかな色を塗り重ねて色彩を追加するやり方です。
リアルに描くにはグリザイユ技法のように描くのが基本ですが、この技法ですと大変時間がかかります。
明るさ3段階にゾーン分けして描く技法
私は絵画教室で、画面を彩度の欄で取り上げた「(3段階の明るさ)明るいゾーン、中間のゾーン、暗いゾーン」で捉え、それを3色で塗り分けて、スタートする技法を学びました。
この技法は、画面を大きく捉えるため、遠くから見た時にもインパクトを与えやすいという利点があります。
平たくいうとグリザイユ技法の3色カラー版ですかね。
しかしながら、複雑な風景を3色カラーに分割して捉えること自体が結構難しいですし経験も必要です。
最初は、それほど真剣に考えずに大雑把に捉えて、明るめ・鈍めで立体感をつけていきましょう。
最後に各ゾーンの情報量について、書きます。
重色の際の情報量について
情報量とは、細かい描写のことです。
明暗の違いの稜線付近を細かく描写することで情報量を増やします。
情報量は彩度の考えと一致しています。
- 明るいゾーン 情報量は少ない
- 中間のゾーン 情報量は多い
- 暗いゾーン 情報量はやや多い
この重色の技法は、「絵画をたしなむ」というyoutubeチャンネルを運営している画家の黒沼さんから教わりました。
下の動画で重色の描き方を具体的に解説されていますので、参考にしてください。
また、黒沼さんは動画などを使って絵画の講義もされています。
最後に
大変難しい技法なので、何度も練習して自然に使いこなせるようになる必要があります。
しかし、この色彩理論と技法をマスターできると、立体的で鮮やかな絵を描くことができます。
初めから、全部を取り入れるのは難しいでしょうから、一つずつからでも実践してみてください。
最後に、当ブログでは初心者の方に向けて、いろんな画材の使い方や描き方などをご紹介しています。下のサイトも覗いてみてください。