”光と陰影”を生かした絵画表現とは!目からウロコです

”光と陰影”を生かした絵画表現

”光と陰影”を生かした絵画表現をしていますか?

なんとなくは知って描いているでしょうが、案外きちんと知らない方が多いのでは?

絵画制作において”光と陰影”を生かすことは、大変重要です。

”光と陰影”の成り立ち、その表現方法やポイント、具体例を解説します。

目からウロコかも。

光と陰影をどう表現すべき

まず、光と陰影が絵画でどのように扱われているのか、少し解説します。

平面的な絵と立体的な絵の違い

絵画には、平面的な絵と立体的な絵があります。

例えば、この浮世絵では、船や木、人々など、それぞれの絵自体はほとんど立体的に表現されてはいません。

さらに陸地の色は黄色一色で変化がなく、全く遠近を感じません。

しかしながら、絵全体としては遠近感を感じ、立体感のある絵に見えます。

”光と陰影”を生かした絵画表現
2次元絵画の参考例

この絵では、船や木、人の大きさなどが組み合わさって遠近感が表現されているのです。

つまり、平面の要素が重なり合って空間が立体的に感じるように構成されています。

浮世絵やアニメ・イラストでは、こんな平面的な表現が多いですし、日本人はこんな表現を好むところがあるようです。

一方、西洋絵画は、古典絵画の時代から基本的にリアル・立体志向で表現されてきました。

これはミレーの有名な作品「落ち穂拾い」ですが、人々も背景の積み藁も、それぞれ一つ一つが立体的に表現されています。

大地の表情も奥に向かって段々と変化していきいます。

”光と陰影”を生かした絵画表現
3次元絵画の参考例

最近のアメリカのアニメでも、同様に立体的な表現が多くみられます。いわゆる3Dアニメというものですね。

”光と陰影”を生かした絵画表現
3次元アニメの参考例

この3次元表現の基本は、それぞれの物体の「光と陰影」を表現していることなのです。

光と陰影がきちんと表現されることで、リアルで自然な感じを受けるわけです。

だから、西洋絵画のように3次元で表現する場合には、「光がどのように当たって、陰影がどのようにできているか」を理解しておく必要があります。

光と陰影を知ってリアルな絵画を

ここからは、光と陰影の面から、3次元空間をリアルに描くための色の扱い方と考え方について解説します。

少しの間、お付き合いください。

光と陰影とは

物を見るときの光と陰影は、このような3つの要素に分解できます。

これらが組み合わさってリアルに見えているわけです。  

”光と陰影”を生かした絵画表現
光と陰影について

光・光源とは

光が当たっている部分と光自体です。光源には、太陽、月明かり、室内灯などがあります。

陰(shade)とは

物体の中で光が当たらずに暗くなっている部分です。

影(shadow)とは

物体が光源を遮って、背後の地面などが暗くなっている部分です。

主光源と副光源とは

光源には2種類あります。それを主光源と副光源といいます。

これらは、絵を描くときに大変重要な要素です。

❶主光源とは

主光源とは、モティーフに当たる最も強い光です。外では太陽の光や月明かり、室内では蛍光灯などの光のことです。

光が当たる部分は、モティーフの固有色に光源の色を帯びた色味になります。

❷副光源とは

主な光源以外の光源のことです。

もし、主光源だけだと、影や陰の部分には全く光が当たらずに完全に真っ黒になります。

しかし、我々は何もせずとも陰影の部分も見ることができます。なぜなら、陰影の部分にも光が当たっているからです。

それが副光源です。

副光源とは、いわゆる反射光のことです。弱い光ですががさまざまな方向からきています。そして、それらは色味をもっています。

実は、我々が物に色を感じるのは、その物体が色を持っているのではなく、その物体が反射した光(色)を感じ取っているからです。

空や海なら青、木々の中では緑、赤い壁の室内なら赤といった具合です。

だから、主光源が当たらないところにある陰影の色味は副光源(反射光)の色味に影響されます

まとめますと副光源には、つぎの2つの役割があります。

  1. 陰影の部分を明るく照らす
  2. 陰影部分の色味に影響する

イメージで光源の色を決める

鉛筆デッサンでは、誰でも自然に光と陰影を明度(明るさ)で表現しています。

後は、「光源に応じてどのような色を使えば良いのか」ということですね。

ただし絵を描くときは、

肉眼でどう見えるかではなく、イメージとしてどういう光の色味で描きたいのかを優先する

これが大変重要です。

すなわち、目に見えるままに描くということではないという意味です。

なぜなら、目の前に見えているイメージをそのまま描いても、単なる写真に過ぎず、平凡な絵にしかならないからです。

自身の感性で描いた個性的な絵にはなりません。

逆に、独自の感性だけで描いた絵は個性的ではあるかもしれませんが、その場任せでは、不自然で統一感のない絵になってしまいます。

そのため、絵を描く前に光源の色をあらかじめ設定しておいて、画面を組み立てる必要があります。

すなわち、主光源や副光源で扱う色をあらかじめ決定しておくということです。

太陽光を例に取って説明します。

ご存じのように太陽光は、元は白色ですが、下のスペクトル図のように波長によって赤から青に分解されます。

太陽光は、空気が澄んだ朝方には青みを持っており、次第に黄みを加えてゆきます。 そして、午後になると赤みを帯び始め、やがて夕暮れの赤色へと変わってゆきます。

これは、太陽が高くなると水蒸気が増え、また太陽が傾くと大気圏を通過する距離が長くなることから、赤・橙・黄色の長波長が優勢になっていくためです。

”光と陰影”を生かした絵画表現
太陽光のスペクトル

このように主光源の色味は、1日の中でもさまざまな色に変化します。

逆に捉えれば、絵画では光の設定を変えるだけでイメージがガラッと変わることになるということです。

それを絵画に意図的に組み込んでいきます。

主光源と副光源の色の決定方法

それでは、実際に主光源と副光源の色を設定しましょう。

私が教わったやり方をご紹介します。

それは、主光源は2色、副光源を1色で構成するものです。

具体例で説明します。

夕日のケース

この場合、主光源は太陽光です。

主光源の色は、明るい部分とやや明るさの弱い部分で色相が変化するので、2色を設定します。

例えば、一番明るいのが黄色、明るさが弱まるところはオレンジになります。

この2色は色相環上で近い色の方が、より自然にリアルに映ります。

そして、副光源は夕方の空の色とし、陰影部分を青紫にします。

青空のケース

澄んだ青空の主光源・太陽は、白っぽい色をしています。そこで、暖色系の、明るく彩度の低い(白っぽい)黄色とオレンジの2色を設定することにします。

副光源は、青空にすると、彩度が高い(鮮やかな)青になります。

晴れた日のアスファルトは光が当たっているところよりも影の部分が鮮やかですね。

色を選ぶポイント

主光源と副光源の色を選ぶ時には、色相環を使って光のイメージ、絵全体の色の組み立てを考えることが重要です。

”光と陰影”を生かした絵画表現
色相環図

手順をまとめます。

①主光源の2色を選ぶ。近い色で!

②副光源の1色を選ぶ

③3色の中でメインに見せる色を選ぶ。

特に③が大事になります。

例えば、良く晴れた日だと副光源の青がメインに、夕方だと主光源のオレンジがメインになります。それらの彩度を高めに描くことで、メインの色が引き立つようにします。

なぜなら、全ての色すなわち主光源、副光源のどちらとも彩度を高くして目立たせると、色が喧嘩することがあるためです。

このように、あらかじめ設定しておくと、絵の色をどのように組み立てるべきかわかり安くなります。

自作絵画での試み

これは自作絵画ですが、参考までに試みを説明させていただきます。

この絵では、春の朝方をイメージして主光源をやや鈍い黄色と黄緑色にしています。

副光源はシアンにしました。シアンは緑っぽい青なので、葉っぱの緑を反射した光と考えて副光源にしました。

”光と陰影”を生かした絵画表現
自作絵画「石垣と桜」

副光源のシアンはがやや鮮やか過ぎたので、緑っぽいグレーや青紫を重ねて彩度を落としています。

メインの色は黄緑にしました。緑は、桜の赤の補色ですので、主役を引き立てるようにと黄緑を主役にしました。

もう少し、わかりやすい例が良かったのですが、勘弁してください。うまく取り込めているでしょうか。

まとめ

光と陰影の色を設定して描くと、絵画全体の色味をイメージしやすくなります。

また、頭で理解しておくことで、意識せずになんとなく描くことがなくなります。

そうすることで、写真とは違った個性的な絵を描くことができるようになります。

そのためには、一つはいろんな絵画作品を見て研究することです。色味に対してイメージを持ちやすくなります。

また、選んだ色をパレット上に描いてみて確認することも大事です。

「この色の組み合わせは綺麗だな」、「この色の組み合わせは良くないな」とか、試しておき、描くときに利用するといいでしょう。

また、お絵描きのアプリを使っても良いです。

私は、CKIP SYUDIO PAINTというアプリを使って、制作途中段階で絵の画像を取り込み、色味を変えて確認したりしています。

以上、光と陰影を用いた「色味のイメージの組み立て方」について解説してきました。

これは、絵画制作の上での単なる一つの方法に過ぎません。

しかし、絵画の引き出しが広がるはずですし、作風も広がるはずです。有効に利用していただければと思います。

絵を描くとは

絵の上手な人でも、皆さん、色のセンスがあって最初から素敵な絵を描けた人ばかりではないと聞きました。

私自身も、いつの間にか明るくて彩度の高い色ばかりを配置しがちで、気をつけるようにしています。

人にはそれぞれ、色を使った経験や色の好みがあります。ややもすると、それらに偏りがちでは?

自身が持っている色彩感覚だけで絵をかくのは、やはり限界があります。

かといって、誰でも絵を描ける、唯一無二の正解の方法はないようです。

ルールのない中なりに、いろんな知識を得て自分なりの正解や方法を見つけるしかないのです。

さまざまな絵画の知識を身に着けて、その限界を突き破りましょう。

前回取り上げた「色彩の分析方法」なども取り入れて、自分なりの正解・画風を見つけましょう。

”絵画の色彩を分析”初心者へ、絵画の上達の近道

また、色彩を扱う時の次のような表現力や技術も非常に大切です。

  • 絵の具をイメージ通りに使う技術
  • 色彩をイメージ通りに描きだす表現力
  • 絵の具に対する経験や知識
  • モティーフを描き出す際のタッチ
  • キャンバスに表現する技術

絵画の道のりは遠いかもしれませんし、案外近いのかもしれません。

とにかく、ルーチンで漫然と描くのではなく、思考錯誤しながら描いていきましょう。

最後に

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

絵を描くときの色彩表現の参考になれば幸いです。

他にも絵がもっと上手くなるポイントを解説したページがあります。

こちらも是非!

絵が上手くなるポイント

 

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グランFgranf1765
第二の人生に入り、軽い仕事をしながら、風景画を描いて過ごしています。現役の時に絵画を始めてから早10年以上になります。シニアや予備軍の方々に絵画の楽しみを知っていただき、人生の楽しみを共有できればとブログを始めました。