”テンペラと油彩の混合技法”を徹底解説します。
テンペラ画といえば古典絵画のイメージですね。
しかし、20世紀アメリカ最高の画家「アンドリュー・ワイエス」もこの画法です。
テンペラ画でも、「テンペラホワイトを使った油彩混合画法」は簡単です。
お試しください。
テンペラホワイトと油彩の混合技法
/徹底解説
まずテンペラ画について、少し触れておきます。
テンペラ画とは
テンペラ画の特徴は「卵テンペラ」という手製のメディウムを使うことです。
この卵テンペラに顔料(粉体)を混ぜて、絵の具を作ります。
卵テンペラには、全卵を使うものと卵黄だけを使うものがあり、またオイルの調合度合いにも違いがあるようです。
古くからある技法なので、いろんな方法が確立されているのですね。
テンペラ画は緻密な絵を描きやすく、変色しにいことから、古くから画家たちに重宝されてきました。
アンドリュー・ワイエスもその一人です。
最近でも、私のようにこの画法を好んで使う方は結構います。
この絵は、ワイエスの知人たちが、メイポール(5月)の周りで踊っている絵です。
なぜか、絵に研ぎ澄まされた緊張感があります。一方で、大変温かい感じがします。
私は、テンペラ画は「緊張感と温かさ」を表現しやすい画法であると思っています。
私のやり方を解説しますので、興味のある方はお試しください。
きっとトリコになりますよ。
ワイエスについては、こちらのページをご覧ください!
テンペラホワイトと油彩の混合技法とは
テンペラ画では、使用する色・全ての種類を卵テンペラと混ぜて作ります。
ここではホワイトのみを卵テンペラと混ぜて使う画法を紹介します。
ちなみに、私はすっかり魅せられて、最近はほとんどこれで描いています。
卵テンペラの
作り方と保存方法
先ほども書いたように、「卵テンペラ」には全卵を使うものと、黄身だけを使うものがあります。
私は、全卵を使っています。
「全卵テンペラは油彩との混合技法に向いている」と言われています。
調合は以下のとおりです。
全卵:リンシードオイル:ダンマルバニス:防腐剤=1:0.5:0.5:数滴
「卵テンペラ」を作る手順は次の通りです。
- 幅がやや広い、蓋付きの小瓶を用意する
- 瓶と蓋を良く洗った後、アルコールなどで除菌する
- 卵を割り入れる
- その半分の高さで、瓶に2本のマークをして、リンシードオイルとダンマルバニスを入れます。
- 最後に防腐剤を数滴入れ、蓋をした後、良く振って混ぜます。
- 必ず冷蔵庫に入れて保管します。
冷蔵庫に入れて保管すると、3ケ月程度は持ちます。
少しでも変色や異臭がしたら廃棄してください。
私の場合、卵は1個では多いので、半分にしています。
私のように、ホワイトだけメディウムを使う場合には、卵1個では多すぎるのです。
卵を混ぜる瓶やスプーンも必ず除菌しておきます。とにかく除菌が大事です。
テンペラホワイト絵の具の
作り方と保存方法
先ほどの卵テンペラを小スプーンで1杯、パレットに取り出します。
卵テンペラは保存しておくと、沈降・分離しているので、取り出す前に良く振ってください。
スプーンも除菌したものを使いましょう。
卵テンペラと同量程度のチタニウムホワイト(粉体)をパレット上でペインテイングナイフを使って混ぜます。
粉の量を微妙に調整して、油絵の具と同等の柔らかさにします。
収納する小皿にスポンジを置き、水を少し入れておきます。(写真)
乾燥すると固まるので、このようにしています。
これに出来あがったテンペラホワイトを入れ、ラップして、冷蔵庫で保管します。
固まるのが早いので、私は、もう一つ小皿(スポンジ、水付き)を用意し、それにテンペラホワイトを小分けしています。
もちろん、できるだけラップがけしています。
こうやると、2、3週間くらい使えます。
おすすめの絵の具や道具について
テンペラ画といえば、印象派のように筆跡を残しながら絵の具を塗りたくったような絵(失礼🤗)ではなく、グラデーションを活かした精緻な絵画という印象ではないでしょうか。
私も大体、そういう絵が好みで描いています。
下地について
下地については、下のページと動画で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
木製パネルを使い、綿布を中敷にして下地材・ミューグラウンドを塗って支持体にしています。
ミューグラウンドは油の吸い込みが良いので絵の具の乾きが早く、油彩独特の乾燥待ち時間を短縮できます。
また、表面が滑らかになるので、緻密な絵を描きやすいですよ。
絵の具について
油絵の具は、ホルバインとかクサカベの絵の具が一般に画材店で売られています。
しかし、ここでは、私がテンペラ画を学んだ時に教わった、油絵の具「ムッシーニ(MUSSINI)」をおすすめします。
メーカーであるシュミンケ社の広告には、ムッシーニをこんな風に表現しています。
「シュミンケの最高級樹脂油絵の具・ムッシーニは、業界の最高の水準を満たすべく、極めて特別なプロセスで製造されている世界的にみても比類ない油絵の具です」
ということで、とにかく発色が良いのです。
厚塗りしなくても十分な色味や発色が得られますし、絵の具の伸びも良いです。
だから、緻密な絵を描く時にはぴったりの絵の具と考えています。
一度試してみてください。
たった一つの難点が結構お高いということです。15mlのチューブで2000円クラス、中にはもっと高いものもあります。
下のお店が他よりも安いようですので、興味ある方は覗いてみてください。ちなみに、私はお店とは何の関係もなく、単なるユーザーです。🤗
溶剤について
溶剤には次のものを混ぜて使っています。
テレピン:リンシードオイル:ダンマルバニス=2:1:1
通常の溶剤と比較すると、リンシードオイルが少なめ、ダンマルワニスやや多めになっています。
なので乾きが早くて、光沢が出るような配合です。
おススメの筆
細かい表現には油絵で良く使われるナイロンや豚毛などの硬い毛は不向きです。
私は、水彩画用の筆を使っています。
ムッシーニなので絵の具の伸びが良く、水彩画に近い感じで描けるからです。
私は、コリンスキー筆(イタチ)を主に使っています。
これも先ほどの画材店で購入しました。いろんな筆がありますので、良さそうなのを使ってみてください。
筆についても動画で説明しています。
こちらをご覧ください。
テンペラ・油彩混合技法の描き方
私の描き方は「グリザイユ技法」と言って、「モノクロで先に明暗と立体感を出してから着彩する」画法です。
この時にテンペラホワイトが活躍します。
ホワイトは、次の3色を使います。
- シルバーホワイト(半透明)
- チタニウムホワイト(不透明)
- テンペラホワイト(極不透明)
これらの透明度の違いを生かして、モティーフの存在感や遠近感を出します。
ちなみにテンペラホワイトはメチャクチャ存在感があります。
それぞれ次のように使います。
- 最も目立たせたい主役にはテンペラホワイトを使います
- 遠方にはシルバーホワイトを使ってぼやけたイメージにします
- 中景には、シルバーホワイトとチタニウムホワイトを混ぜて使います
- 近景ほどチタニウムホワイトを多めにします
こんな風にすると、いい感じになります。
グリザイユでのモノクロの描き方は下の動画にざっとまとめていますので、ご確認ください。
モノクロ段階が終わったら、先ほどの絵の具を用いて少しづつ透明〜半透明な色を重ねて着彩します。
そうすることによって、下の色合いと重なりあって段々と重厚な感じが出てきます。
決して、いきなり不透明な色で濃く塗らないでください。
グリザイユ技法が台無しになります。
不透明色は、最も重要なポイントのみに使いましょう。
または、透明や半透明色と混ぜて使いましょう。
着彩についても、動画を投稿したいと思っています。
完成して十分に乾かせたら、防カビのためテンペラバニスを塗っておきましょう。
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
いかがでしたか?
描いてみないと、良さを実感できないかもしれませんね。
よかったら試してみてください。
他にもこんな風に「油絵の画材と描き方」ついて取り上げています。
こちらから確認してください。
また、いろんなカテゴリーのページがありますので、ホーム画面にもお立ち寄りください。