”油彩で古い街を描くポイント”を知りたくないですか?
古くからの街は郷愁をそそるせいか人気のモティーフです。なので絵も描きやすいです。
しかし、描くポイントや描き方のコツを知るともっと素敵な絵になります、
著名画家の絵も参考にしながら解説します。
時の声が聞こえる古い街の風景画を描く
油彩で古くからの街の風景を描くポイント
私は古い街を描くのが大好きです。
これまでに国内外のたくさんの古い街を描いてきました。古いと言っても、私が惹かれるのは古代遺跡ではなく、古くから人が住んでいたり、神社仏閣など使っている建物がある街のこと。
私は、次の諺が好きです。これは、東山魁夷がドイツで知ったものです。
『古い建物の無い町は、想い出の無い人間と同じである』
ご存知の通り、ドイツの街は先の対戦で壊滅的な被害を受けました。その際に多くの古くからの建物が失われました。

この街”ローテンブルク”もその一つです。
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ローテンブルクは中世の街並みがほぼ完璧な形で保存されています。その美しさから、「中世の宝石箱」と称されています。現在、12000人ほどが暮らしています。
この街は、第二次世界大戦で旧市街の40%を失いました。しかし、その後のご努力により多くの建物が昔のままに再建されて、中世そのままの佇まいを残しています。
「古い壁のシミまで元どうりに復元した」とのことで、その徹底ぶりに驚かされます。私も一度訪問したことがありますが、それを教えられるまで、この街が再建された街と全く気づきませんでした。
なぜ”壁のしみ”まで再現したのでしょう。
この街は、長い歴史を経て、さまざまな多くの出来事があったはずです。シミはその一つの想い出の証だったのでしょう。
私は、絵で風景の中に流れる「時の声」を表現するように努めています。
光や風、街角に残る気配の中に、自然の息づかいや人の記憶を感じ、聞き取って絵にしています。
そんな私にとって、古くからの街は最高のモティーフなのです。
前置きが長くなりましたが、私が古い街を描くときに注意していることを順に解説します。
ポイントはこの5つ
1. 光と影で“時代感”を演出する
古い街は「低い位置の太陽」「斜光」など、柔らかい光が似合います。
この絵は、モネの作品です。パリのサン=ラザール駅の光景です。柔らかい朝の日差しが駅を照らし、これから始まる1日の活気を予感させてくれます。
”長い歴史の中で今日も1日が始まる”、そんな感じがしませんか!

一方、光源を明確にし、建物の凹凸・石畳のへこみ・木枠などの歴史的な質感に影を落とすと“古びた空気”を表現できます。そしてハイライトは純白を使いすぎず、黄み・温かみを混ぜるとアンティーク感が出ます。
これは、ゴッホの作品です。石畳の凹みも均一なものでなく、欠けているところが一層アンティーク感を増しています。

2. 質感描写を丁寧に
古い街は“素材の多様さ”が絵の魅力になります。

この絵では古い大きな金属製の暖炉が目を引きます。
そして木製の扉や天井、土壁や陶器の鉢、使い込まれた椅子など、多様な素材が描かれています。そしてそれぞれの質感が丁寧に表現されています。
全体に汚れていますが、例えば、暖炉は角のあたりに鈍い反射光が、木製の椅子にはテカリも。これらが、長く使われてきた生活感を感じさせます。
油彩は重ね塗りが利くため、“時間の堆積”を層で表現するのに相性抜群です。
3. パース(遠近)の強調で“奥行きのある街”に
古い街は路地が狭く、建物が迫る構図が多いため、消失点をしっかり定めると安定します。
道をゆるくカーブさせると、奥に何があるか想像させて“物語性”が強まります。
それによって、見る人が独自の物語を作ってくれる。そんなきっかけになれば。

4. 限定された色で統一感を出す
古い街の絵は、色が派手すぎると現代的に見えがちです。オーカー、バーントシェンナなどのアンバー系の温かい色があっています。
グレーは単純な黒+白ではなく、補色混合の“くすんだグレーを使うと雰囲気が出ます。
補色混合とは、色相環の反対の色同士を混ぜることですが、そうすることで、それらの色味を持ったグレーを作れます。まだの方は試してください。
空の青も抑えめにすると、全体の世界観がまとまります。
世界観を意識しながら絵を描くのが大事ですね。

5. “生活の痕跡”を控えめに描く
洗濯物、古いポスター、割れた植木鉢、錆びた街灯などのちょっとした小物・生活の痕跡を入れると、絵に歴史が生まれます。なぜなら、それらはそこで暮らす人々の記憶の中に息づいているからです。
過剰に描き込まない方が上品ですが、1~2点入れるだけで時を感じさせるアクセントになります。

制作上で注意したいこと
▼ レイヤーを重ねる
古い街のような複雑なモチーフは、多層で描くほど味が出ます。とはいえ、ひび割れや剥離しやすいので、注意が必要です。
下の層は揮発油多めの溶き油を使うかと思いますが、上層になると乾性油を多めにしてひび割れや剥離を防いでください。
また、そうすることで油による光沢感も得られます。
▼ ナイフを有効に使う
細部は小筆で丁寧に描くと良いですが、それだけだと小綺麗にまとまった絵になってしまい、歴史を重ねた街の雰囲気が出ません。
壁の質感・光の反射 などをペインティングナイフで荒々しく描くと、古い建物の魅力が引き立ちます。
この作品は、京都の石塀小路を描いた私の作品です。巨匠たちと並べるのは気が引けますが、評判が良くてお求めいただけた作品です。参考までに。

▼ 現実をそのまま写さない
風景画の場合、必ずどこかの風景を元に描きます。しかし現実のままだと現代的な人工物が入り込むことがあります。
余計なものを省いて、時代を感じさせる要素だけ残すことで“古い街”の物語性を高めます。
先の”京都の絵”の女性は、実は派手な洋服姿の女性でしたが、着物姿に変えています。また余計な看板は外しました。
▼ 隠し味を有効に使う
料理と一緒で、絵でも隠し味が大きな効果を発揮することがあります。表面的には気づかないほどですが、かなり大きな効果を発揮します。
早い話、絵を描き込む前に自然な感じで画面を汚しておくことです。私は”きれいに汚す”と考えています。その自然な汚れが、歴史を生き生きと物語るのです。
ここでは、詳しく述べませんが、さまざまなやり方があります。例えば、私はこんなことをしています。
- ローラーを使って描く(汚す)
- ポタポタと絵の具を落とす
- ジェッソなどの下地に凹凸をつけておく
- など
Youtubeのショート動画にローラーを使った様子を紹介していますので、そちらも覗いてください。
また、こちらは私が絵を描いている様子をまとめたブログ記事です。いろんな絵の描き方のショート動画を掲載していますので、こちらもご覧ください。
まとめ:より“古い街”らしくするコツ
まとめるとこんなことでしょうか。中西繁さんのヨーロッパの街の絵はこれらが忠実に守られているように思います。
- 光の方向を一貫させ、光と影で時代感を出す
(ノスタルジックな雰囲気を決定つけます) - くすんだ色調で統一し、鮮やかな色は控えめにし、ポイントとして使う
- 時間の積層を意識し、絵具を薄く厚く重ねる
- 細部は控えめにし、全体の空気感を優先する
- 不要なものは大胆に削る(現代的な物を減らす)
中西繁さんは絵の描き方の本も出されているので、よかったら購入してください。
例えば、”油彩画プロの裏ワザ・中西繁著”(講談社)は、長年の中西さんの油彩画経験が集積された名著です。
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
いかがでしたか。参考になりますか。
いろんなポイントを書いてきましたが、やはり
「まず自分がその風景に感動し、どういう物語を語るか、絵に込めるのか」
と言うことが大切だと思います。
古い街に流れる時の声を聞きながら!
こんな風に、油彩画のことについて、他にも紹介しています。
是非ともこちらを覗いてください。
他にも、アクリルや水彩画、公募展、個展、おすすめ画家など、たくさんの記事を投稿しています。
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