”人生論ノート”をご存知ですか?
哲学者三木清さんの著書で、誰もがぶつかる人生の悩みについて記したものです。
興味深いことに、この本には『幸福と絵画』に関しても書かれています。
第二の人生で絵画を楽しむ私に、これからの生きる指針を与えてくれました。
幸福とは?
第二の人生を生きる指針
三木は日本を代表する哲学者の一人で、膨大な著作を残しています。
1897(明治30年)〜1945(昭和20年) 48歳で没す。
今回取り上げる「人生論ノート」は1941年、太平洋戦争の直前に刊行されました。
これには、「死」「幸福」「怒(いかり)」「孤独」「嫉妬」など、誰もが突き当たる人生の問題が記されています。
本書が書かれた太平洋戦争直前は、書物などが大変厳しく検閲された時代であり、三木いわく「狂人の真似をしなければ、正しいことが言えない時世」でした。
そのため、三木は故意に難解な書き方をして何とか検閲を逃れており、本書の原本は、哲学書と言うこともあり非常に難解です。
哲学者三木清が語る
「幸福と芸術」
『人生論ノート』についてNHK「100分で名著」という番組で取り上げていました。
私は、早速、原本と「100分で名著の解説本」の両方を購入しました。
原本は難解であったため、以下は解説本から私なりに拾い上げたものです。
青は三木の文章、緑は解説者の文章です。
解説者は、まず、次の言葉を引用しています。
「我々の時代は人々に幸福について考える気力をさえ失わせてしまったほど不幸なのではあるまいか」
結構ドキッとする文章です。これは困難な戦前の状況を反映したものでありますが、今日に当てはめても理解できる一文です。
一億総中流と自虐的に称していた時代は、今と比べれば良き時代だったようです。
昨今は若者にも低所得の人達が増え、中には将来に希望や明るい見通しのない人たちもいると聞きます。
コロナの流行、各地での戦争、地球温暖化の進展などから、人々はますます生きづらい時代になっているようです。
『成功と幸福の違い』
それでは各論に入っていきます。まず三木の言葉から!
「幸福を求めることに良心の呵責を覚えるようなことがあってはいけない」
「成功と幸福とを、不成功と不幸を同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった。」
成功と幸福を取り違えてはならないと述べています。
「あれなら自分にもできると思えるのが成功です。だから、成功は他人の嫉妬をかいやすい。そして模倣すれば自分もそうなると思う。だが、純粋な幸福は‥」
確かに思い通りの成功を収めることが幸福と考えがちです。成功を幸福と考えるため、余計に生きるのが苦しいのでしょうね。
自分の思いが叶わないとすぐに落ち込んでしまいます。
成功と幸福は違うようですね。
初めから大いなる勘違いを指摘されました。
『幸福は力』
三木は『幸福は力なり』と語っています。
それは何を意味するのでしょう。
「人は幸福に『なる』のではなく、幸福で『ある』」
「幸福は各人においてオリジナルなもの」
「真の幸福とは感性でなく、知性で考えることによって理解されるもの」
「幸福は力である。幸福は表現的なものである。鳥が歌うがごとくおのずから外に現れて他の人を幸福にするものが真の幸福である。」
幸福は画一的なものではなくオリジナルなもの。
だったら、自分で考えて気づくしかないですね。
幸福に気づき、それが自然と言動や行動に現れて周囲を幸福にするとは!
目から鱗のような言葉です。
すぐに忘れてしまいそうですが、噛み締めながら生きていこうと思います。
『娯楽と幸福の関係』
今度は娯楽について語っています。
「娯楽というものは生活を楽しむことを知らなくなった人間がその代わりに考え出したものである。」
「それは幸福に対する近代的な代用品である。」
「幸福について本当に考えることを知らない近代人は娯楽について考える。」
解説者の言葉を借りると、
「娯楽が単に生活からの逃避になっている」
という指摘だそうです。
仕事や家事に追われる日々からの逃避、息抜き、気晴らし。
私もよくやってきました。
だけど言われる通り、
それは単なるストレス解消であって、それと幸福とは違うなとは薄々気づいていたように思います。
『芸術と幸福との結びつき』
三木は芸術と幸福の関係にも述べています。
絵画好きの方、お待たせしました。
「娯楽は生活の中にあって生活のスタイルを作るものである。」
「娯楽は単に消費的、享受的なものでなく、生産的、創造的なものでなければならぬ。」
「単に見ることによって楽しむのでなく、作ることによって楽しむことが大切である。」
「娯楽が芸術になり、生活が芸術にならなければならない」
そして、さらに
「真に生活を楽しむ者はディレッタントとは区別される創造的な芸術家である」
ここで、ディレッタントとは娯楽を単に趣味や批評家として楽しむ人達を意味します。
解説者は、次のように説明してくれました。
「娯楽と生活は不可分。どちらにも楽しみがあり、芸術的素地があり、どちらも人間にとってなくてはならないもの」
「芸術は、娯楽的、消費的な対し方をするのではなく、自ら創造、制作して究めていくことが肝要」
芸術をたしなむ方々には元気をもらえる言葉ですね。
「娯楽が芸術になり、生活が芸術にならなければならない」
かなり深い言葉です。
なんとなく理解できますが、残念ながら、未だ完全にはこの言葉の意味を理解できていません。
できるだけ、そういった生き方をしていこうと思う、今日この頃です。
写真家『ソールライター』
話は変わりますが、ソール・ライターと言うカメラマンをご存知ですか。
ライターはニューヨークのファッション界で成功を収めていた人でしたが、突然その地位を捨てて、仕事としてではなくニューヨークの街角を撮り続けた人です。
別のページでソールライターを取り上げています。是非とも覗いてみてください。
この人こそ真の幸福を理解し、三木清の教えを体現した人ではと思っています。
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
拙い説明しかできず、ご勘弁ください。
なにしろ凡人の私、ややもすると成功を幸福と取り違えたり、娯楽に逃避しがちであったりします。
三木の教えを元に、
創造的に絵画制作に取り組み、他の人をも幸福にできる、真の幸福を持てる人
そんな人に近づきたいと思った次第です。
しかし、遠いなー(笑) ♪ How many roads must a man ……
なんとなくご理解頂けたでしょうか。
これを機会に、是非ともご一読ください。
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