”細密な油絵の下地はこれ”と題し解説します。
油彩で細密な絵を描くけど、安くて簡便で良い下地がないかなと考えておられませんか。
そんな人にぴったりの下地です。
パネルは安価な手作り、下地には古典絵画の石膏にも劣らないミューグラウンドを使用します。
細密な油絵に向いた下地作り
この方法は、テンペラで緻密な絵を描く方に教わったやり方です。
木製パネルに綿布を中敷にしてミューグラウンド(液体下地材)を塗るというもので、油絵で細密な絵を描くのに大変向いています。
私は、15号までは全てこの方法でやっています。
どんなやり方、以前は?
古典絵画では板を支持体にし、下地材として石膏や白亜が使われてきました。
石膏や白亜は吸水性が高いため、油絵の具がしっかりと吸着します。また、絵の具の乾燥が早いので乾き待ちの日数を減らせます。
また、木は凹凸が少なく滑らかなため、細密な描写に向いています。
そのため、油彩画家たちが大変重宝していました。
ただ、石膏や白亜の場合、「石膏の粉をフルイにかけて、粉体チタニウムホワイトと混ぜ、膠水でこねて」などと結構面倒です。
今回使用するミューグラウンドは液体タイプなので塗るだけです。
しかも、石膏や白亜と同等の性能が得られます。お値段もお手頃です。
これに綿布を挟むことで、優しい柔らかな感覚のマチエールが得られます。
また、布が入ることで下地の吸水率が高まりますし、乾燥収縮に耐える補強材の役割を果たします。
木製パネルは市販のものでも良いです。
ただ、パネルは小さいものでもなかなかのお値段なので、私は自分で作っています。
形も自由に作れますしね。
標準サイズなら、市販の油彩額に入れられます。
油彩画には何かとお金がかかりますので、少しでも安くて良いものをと思いませんか。
石膏(白亜)とミューグラウンドの違いについては、こちらのページをご覧ください。
”油絵の下地”塗りはジェッソ、石膏?ミューグラウンドでしょ!
木製パネルの作り方
使う材料と工具
木製パネルの材料: ベニア板 2.3mm、角材(桧材)9mm✖️15mm
F8やF10くらいまでなら、この厚みや太さで十分です。
使用する工具類:ガンタッカ、ステープル(肩幅12mm、足長10mm)
ガンタッカとは、ステープラーのでかいやつで、針を打ち込めるものです。
肩幅12mmのステープル(針)を打てるものが良いです。
私はMAX社製を使っています。
布キャンバスを張る時にも使えますので、少し高いですが購入しましょう。
ステープル(針)の足長は何種類かありますが、10mmのものがちょうど良いです。
写真と商品広告を確認してください。
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作り方
基本的には、市販の木製パネルと同じように板と角材を組み合わせます。
動画で作り方をご覧いただけるようにしますが、注意点などをいくつか書いておきます。
- ノコギリで切断すると1mmくらい小さくなるので、1mmずつ広め、長めに切ります。なお額縁には数mmのはめ込み余裕があります。
- 板の面から角材に向かって針を打ちます。なので針が表面に見える形になります。下地を塗って隠れるようにハンマーで十分に叩き込んでおきます。
(針が気になる場合には、木工ボンドなどで角材を板に貼り付けてください。ボンドでは剥がれる可能性があるので、私はこのやり方にしています。) - しっかり打ち込めるように固い台の上で作業をします。
- 角材同士の角をピッタリ合わせる必要はありません。
- 切断面の棘でケガをしないように、サンドペーパー(#100)で磨きます。!
下地塗りのやり方
使用する材料と工具
下地塗りに使用する材料:ミューグラウンド、綿100%コットン
ミューグラウンドはアクリル樹脂エマルジョンの液体です。
プラスチックの缶に入っています。
ビニールの袋に入っていますので、その日に使うものを取り出したら、ゴムで縛ります。そして蓋をきっちりと閉めます。
こうしておくと数ヶ月は固まりません。
取り出すときに手につくのが難点ですが。🤗
コットンは手芸屋さんにあり、巻いてあるものを切り売りしてくれます。
幅にもよりますが、1、2mあればしばらく使えます。
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使用する工具類:ガンタッカ、ステープル(肩幅12mm、足長10mm)、液を入れる小皿とハケ、ドライヤー、#400サンドペーパー
ガンタッカは先ほどと同じものです。ステープルの足長は6mmでも良いです。
サイズの小さいパネルならハケは幅5cmくらいのものが良いです。
やり方
布をパネルよりも10cm(片側5cm)ずつ大きめにカットしておきます。8cm以上ならok。
液が垂れるので、下に新聞紙などを敷いておきます。
- パネルに下地の0層目を塗ります。原液をそのまま塗ります。
- 0層目が乾かないうちに、パネルを裏返して塗った面をコットン中央にかぶせます。この時、布にシワが残らないように、下に空気が残らないように、布を伸張します。
- パネルを裏返して新聞紙の上に置いて、少し布を引っ張りながらガンタッカで布を留めていきます。
- 布の角をV字型に切り取り、角を折って処理します。深く切り込まない方が上手く処理できます。
- ❷を裏返して、布の上にさらに1層目を塗ります。
ここまでは、ミューグラウンドが乾かないうちに行います。
- 2層目を塗る前に乾かします。なかなか乾かないのでドライヤーを使います。2層目を塗ります。ここまでは原液を塗ります。
- 乾かせてから3層目を塗ります。仕上げなので、少し水を加えて滑らかに塗ります。
- 日陰で3日以上乾かします。
- サンドペーパー(#400)で表面を磨きます。
動画で解説
文章では細かいところが分かり辛いかと思い、動画を作成しました。
倍速でも良いので、是非とも確認してください。
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
油彩画で細密な絵を描く方には、きっとお役に立てると思います。
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