”風景画の効果的な主役配置と視線誘導”について書きました。
風景画を描く皆様、こんなことを考えませんか?
- 風景画であっても、何かをメイン・主役にして描くべきなのか!
- 風景画なら、全体の雰囲気を伝えるだけで良いのか!
いったいどんな風景画を描くべきなのでしょうか。
大変大事な話ですので、お見逃しなく。
風景画の主役配置と視線誘導
私は主に風景画を描いています。
以前、絵画仲間のSNSグループに作品を投稿した時にこんなアドバイスをいただいたことがありました。
福家さんの絵は、(中略:お褒めの言葉🤗)ですが、
- 全体に緻密に描いてるので、絵にもっと疎密を持たせるか、主役を明確にした方が良い
- 視線誘導の考えを取り入れて、見せたいものに視線がいくようにした方が良い
確かに、その通りでした。
それまでも気にして注意しながら描いてきたのですが、あらためて反省した次第です。
風景画の場合、風景全体のイメージに惹かれて描くので、そうなりがちかもしれません。
また、風景はどこもが愛おしく、そもそも私には主役・脇役なんて考えがあまりないのです。
本当は、遠景にある小さな家の形や、石積み壁の模様など、小さな物に惹かれるのです。性格ですね。
だから、ありふれた里の風景などでは特に主役を決めるのが難しく、ややもすると「 あちこちに主役がある」絵になりがちです。
ここでは、私の失敗例や成功例をたたき台として、効果的な主役配置と視線誘導について書いています。
出来れば、ご自身の作品もあらためて分析してみてください。
風景画の主役について
風景画でも主役は大事
風景画でも主役が必要なのでしょうか?
まず、この辺から書いていきます。
ちなみに、一般の方が絵を見る時には、こんな見方をするようです。
- メインのモティーフを中心に見る
- 背景や画面の端にはあまり目を向けない
- 明るい暗い、暖かい寒いなどの漠然とした印象で見る
一般の方の見方がこうである以上、「まず主役があって、それがわかりやすい」ということが、絵を制作するにあたって心しておくべき事柄だと思います。
なんとかして絵の前で立ち止まり、絵に見入ってもらえないと、絵を気に入ってはもらえません。
なので、風景画を描く場合には全体の印象に配慮しながら、できるだけ主役が引き立つように描きたいものです。
主役がわかりやすい絵とは
こんな絵では主役がわかりやすいと言われています。
- 画面に一つしかモティーフがない
- 人の顔
- 同じモティーフが並んでいても一つだけ色が違う
- 形が同じでも他と比べて一番大きい
- 画面のど真ん中にある
- 明暗や彩度の差が一番激しいところ
- 集中線の先
風景画の場合、富士山や桜などがわかりやすい主役の代表例ですね。
しかし風景画では、主役を決めるのが難しい時があります。
次の絵は、いわゆる里の風景です。
春の里山の柔らかい印象に惹かれて描きました。
しかし里の風景だけだと、私には主役が見つからなかったのです。
なので、主役として子供やトラクターを配置しました。
本来なら、もう少し背景の山を粗く、また彩度を落として描いた方が主役が生かされたのでしょう。
そうすれば、もっと主役が引きたち、
まず視線が子供に向かい、そして子供からトラクター→山裾から中腹へと駆け上がってくれたでしょうか。
次の絵は大阪城で見かけた梅の風景です。
こちらは主役を梅に決めて、できるだけ梅を強調するように、主役の明暗と彩度を強調して描きました。
先ほどの、「わかりやすい主役の要素が、前の絵よりも入ってるな」と思いませんか。
すみません。自画の自賛で!
視線誘導について
風景画には、次のようなことが起こりがちです。
- 主役が一つではない場合がある
- 主役以外にも見てもらいたい大事な場所がある
私の場合、困ったことに、たびたびこれが当てはまります。
風景画では、ありがちなのでしょう。
しかし先ほど、人はメインのモティーフを見てそれ以外にはあま目を向けないと書きました。
なので絵を狙い通りに見てもらうには、意図して見て欲しいところに次々と視線がいくようにしないといけません。
ただし、そんなことができるのでしょうか?
そこで視線誘導の登場です。
ところで、人が絵を見るときの特性は次の通りと言われています。
- 視線は左上から右下に移動する
- 視線は大きい形から小さい形へ移動する
- 隣の要素に視線が移動する
- 視線は共通性のある色や形を追う
- 画面をジグザグに見る。
なので簡単に言ってしまうと、以上の特性を配慮すると視点を誘導しやすくなります。
次の絵は、その典型のような作品です。
この作品は2021年のJAM展(F4号の風景画対象)で見かけました。
この絵を分析してみましょう。
まず、絵の主役は少女でしょう。
周りに猫たちが巧みに配置されて、奥のおばーちゃんだと思える人まで視線を誘導しています。
少女は部活でもしていたのでしょうか、重そうな鞄を背負い、疲れたのかうつむきかげんで歩いてます。
しかし、「もう少しで暖かい家が待っている」、そんなことを感じさせてくれる絵です。
視線誘導を生かした素晴らしい作品ですね。
この絵には、まさにお手本通りの視線誘導がなされています。
- 大きさ、色、配置を変えて視線を誘導している
- S字のラインに猫を配置してマイルドに誘導している
- 左上から右下への動きのある対角線配置
こんな風にこの作家さんは大変巧みに絵を構成しておられます。
見習いたいものです。
ただあえて一言、言わせてもらうと、私なら主役の少女をもう少し強調したかもしれません。(勝手なコメントですみません🤗)
このように主役から別の主役へ、また主役から重要な箇所に向けて視線を誘導する線をリーディングラインと呼びます。
リーデイングラインを生かして、絵の中を自在に誘導できるといいですね。
風景画の主役配置のポイント
主役を配置するときの、ポイントをいくつかご紹介します。
集中線を使う
風景画の必勝パターンとして、次の解説がありました。
- 手前から奥に道が続いていくような視線を誘導させるモティーフ
- それを後景の右上で右下がりの斜線とつなげ、中景にはメインをおく
先ほどのネコの作品がまさにこれです。
私も、そんな風景を描いていたので、一例としてご紹介させてもらいます。
この作品は尾道の高台にある寺から、市街や湾を見下ろした風景です。
中央にある紅葉した赤い葉っぱが主役です。
なんとなく構図が気に入って描いたのですが、風景画の必勝パターンであったとは。
上の絵では、階段が集中線になっていますが、
- 木の枝、並木
- シーツのしわ
- 雲の流れ
- 光と影
など、いろいろ物を使えますので、是非ともお試しください。
絵のバランスをとる
主役をどちらかに寄せて描く場合、大きなモティーフが片方に一つだけだと中途半端な間ができて不安定な印象を与えます。
見る人の視線を隅々まで誘導するためにも、サブのモティーフがあると効果的です。
次の絵が、このパターンに当てはまると思い、挙げさせていただききました。
リスボンの街角です。
中央の三輪自動車から左の三輪自動車へ、それから奥をぐるっと回って右の人へと誘導されたら良いのですが。
いかがだったでしょうか。
長方形の眼を使う
対角線に向けて対する角から垂直に下ろした線の交点を長方形の眼と呼びます。
1枚のキャンバスに4ヶ所できますが、そのうちの1ヶ所に主役のモティーフを置くとカッコよく決まると言われています。
この絵では主役である右側の赤い梅の花の先端が長方形の眼に位置しています。
左の白い梅の花の先端はもう一つの長方形の眼の付近にきています。
別に線を引いて描いた訳でもありませんが、なんとなく心地よい場所を探すとこうなっていました。
梅の花自体も対角線上に配置されていますので、動きがあるように見えるかと思います。
心地よさを追求すると自然とそうなるのでしょう。
とはいえ、意識して描くことで失敗をできるだけ防ぐことになろうと思います。
疎密を使う
しっかりと描き込む部分と余白の部分とを組み合わせることで、画面を魅力的に構成できると言われています。
しかし立体感を持たせる風景画ですと、なかなか思い切って余白を作ることができません。
何も描かない部分は平面的な感じになりがちです。
日本画では時々このような絵を見かけますが、立体感が重視される油絵の場合には難しいと考えています。
なので彩色した部分を主役にし、背景をモノクロで表現してみました。
こちらはイスタンブール旧市街の絵です。
手前の観光船(レストラン)を主役にして描きました。
背景の準主役のモスクはモノクロにして風景に溶け込ませてみました。
こんなやり方もあるのではないでしょうか。
※本文を作成するにあたって次のページを参考にさせていただきました。ありがとうございました。
絵画の視線誘導!名画から構図の考え方を学び絵のレイアウトを決めよう
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
風景画でのあるある話でしたが、お役に立てそうですか?
私自身、まだまだ修行中の身です。少し納得できる絵が描けたり、今ひとつだったりと泣き笑いの日々です。
皆様と悩みを共有しつつ、少しでも向上できれば幸いです。
他にもこんな風に絵が上手くなるポイントについて取り上げています。こちらから確認してください。
また、いろんなカテゴリーのページがありますので、ホーム画面にもお立ち寄りください。
Youtubeにも投稿
「風景画の旅」と言うテーマで、国内外の風景と自作絵画を動画にして紹介しています。
お気に入りのモティーフが見つかるかも!