”透明水彩で風景画”を描いたことはありますか?
最近は水彩画が人気ですし、風景画を好む方も多いようです。
誰でも、ポイントさえ押さえれば水彩画らしい絵を描くことができますので、トライしませんか。
今回は、2作品をベースに風景画を描くポイントを解説しています。
透明水彩で風景画を描くポイント
前回のページでもご紹介しましたが、水彩画の基本は次のとおりです。
これは、風景画を描く時も同じですので、おさらいをします。
① 白地を生かす
水彩画では基本的に白は下地の紙の白を利用します。
② 徐々に暗く、徐々に鮮やかにしていく
最初は多めの水で溶いて、明るく鈍めに描き進め、細やかな色の変化で立体感を出してから、暗く、鮮やかに仕上げるのが基本です。
なぜなら、透明水彩は下地の色が残ってしまうため、いきなり濃い色を塗ると塗りなおしができません。
また、立体感と鮮やかさを同時に追求するのは難しいことなので、まずは立体感を出していきます。
鈍い色に原色に近い色を重ねると一気に鮮やかになりますので、焦らずに徐々に描きましょう。
③重ねて塗る場合は、乾燥を確認してから優しく塗る。
まだ乾かないうちに塗り重ねて滲みやぼかしの表現をする時以外、乾燥の確認は大切です。
そうしないと色が混ざって濁ってしまいます。
④ 鉛筆の下書きには、手を抜かない
透明水彩では鉛筆線が透けて見えることがありますし、鉛筆線が残った方が絵がかえって見栄えすることもあります。
なので、水彩画で風景画を描く場合には、下書きの線には手を抜かないように!
線をくっきりと見せたい時にはボールペンなどを使うこともあります。
ただし、空の雲のように線が残ると邪魔な場合は、練りゴムで鉛筆線を叩いてできるだけ薄くしておきます。
透明水彩で田園風景を描く
この絵は画家の黒沼大泰さんの教室で教わって描いた水彩画です。
この絵をベースにして水彩画で風景画を描くときのポイントを説明します。
この絵の制作ポイント
この絵を描く時のポイントは、次の5つです。
- 必ず、水彩紙の水張りをする
- 緑、青、グレーの色面を塗り分けてから描き進める
- 常にやや明るめに描き進める
- 画面のやや暗めのゾーンに細かい描写を入れる
- 境界を溶かしてピンボケを作る
それでは、具体的に説明します。
1.必ず水張りを
風景画では、通常多くの水を使いますので、水彩紙を水張りしておいてください。
水張りしていないと、紙がべこべこになります。
水張りせずに、水を控えながら描いていくと、水彩画の良さを出せません。
2. 緑、青、グレーの色面を塗り分けてから描き進める
このような風景画では、まず初めに画面を大まかに塗り分けてから描写を進めます。
屋外の風景ではこんなモティーフが多いのではないでしょうか。
今回は、緑の面、青の面、グレーの面に塗り分けます。
制作の序盤には遠近感を強く意識して淡い色面で画面を切り分けます。
ムラなく明るめに塗ると自然な透明感を出せます。
3. 常にやや明るめに描き進める
上記のように大まかに色面を塗り分けた後で、空の雲のない場所や水面や稲の影のゾーンに大まかに一段階暗い色をつけ形を作っていきます。
まだまだ、水が多めでムラなくフラットに塗っていきます。
まず立体感や遠近感を重視して描いていきます。
明るいゾーンは、黄色よりの鈍い色
暗いゾーンは、青寄りのやや鮮やかな色で形取っていきます。
常にやや明るめに描き進めます。
そして、徐々に暗い場所に、影の形を丁寧になどりながら暗い色を重ねていきます。
屋外の風景では影色を青っぽくすると自然に見せることができます。
なお、水面は、地面が透けた色か空を反射した色なのか意識して描くと自然に見えます。
重ね塗りする時は、下に塗った色が乾燥してからにしてください。色が混ざって濁ってしまします。
また、晴れた日の屋外の風景を描く時は、画面全体を明るく仕上げるのがポイントです。
屋外では影の部分でも明るいので真っ黒を使わずに、明るめの色だけで仕上げるのがコツです。
明暗のコントラストをあまり使わずに描くのは簡単ではないですが、それが水彩画の良さでもあります。
4. 画面のやや暗めのゾーンに細かい描写を入れる
今回のように明るめの設定で描く場合には、画面のやや暗いゾーンに細かい情報が集まります。
暗く鮮やかな色でやや暗い部分に細かい描写・タッチを入れます。
情報に疎密をつけると自然に見せることができます。
この絵では、特に稲や山の影の部分ですね。
ということで、明るいゾーンは光の中に溶け込むようにボンヤリと形を描き、やや暗いゾーンは細かいタッチを丁寧にたくさん入れます。
画面全体の疎密の状態を意識して描くと良いですね。
5. 境界を溶かしてピンボケを作る
水だけを含んだ筆で水面の影や雲の境界を溶かして、水彩画らしい、にじみ、ピンボケを作ります。
溶かして暗くなりすぎた時にはまだ濡れているうちにティッシュで押さえて吸い取ります。
画面が濁らないように、筆をこまめに洗うのもコツです。
ピンボケを作った後で再度見直し、必要に応じて加筆します。
こんな色を使いました
稲に使った色
下地には「パーマネントグリーンNO.1+パーマネントイエローレモン」を、そして、パーマネントグリーンNO.2 、コンポーズブルー、ビリジャンを使っていきました。
空と山に使った色
下地には「コンポーズブルー+アイボリーブラック」を、そしてコバルトブルーも使いました。
水面に使った色
下地には「コンポーズブルー+アイボリーブラック」を、そしてこれを徐々に濃くしていきました。
透明水彩で桜を描く
この絵も画家の黒沼大泰さんの教室で教わって描いた夜桜の水彩画です。
細かい描写をするのが難しいモティーフですね。
こんな風景を水彩で描くときのポイントを説明します。
この絵の制作ポイント
この絵を描く時のポイントは、先ほどの風景画とほぼ同様ですが、それに加えて次の2つを頭に入れておく必要があります。
- 半透明な花の質感を出す
- 細かい形を省略する
1.色面を塗り分けてから描き進める
初めに背景を塗る
今回のような複雑なモティーフの場合は初めに背景をぬっておくと、モティーフの形を把握しながら描きやすいです。
モティーフの形をよく観察して、丁寧に背景の部分だけを細い筆で塗っていきます。
ムラなく塗りたいので薄くなってしまったところには、重ね塗りして均一な面にしていきます。
次に桜を塗る
いきなり桜を鮮やかに塗ると立体感や空間の演出が難しくなるので、初めは水をたくさん混ぜた薄い絵の具を塗っていきます。
桜のピンク色は白と赤を混ぜた色ですが、水彩では白色絵の具を使いません。
薄く溶いた赤を白い紙に描くことで、ピンクを表現します。
今回は夜景ということで、ややオレンジよりの赤を使っています。
基本的に明るいゾーンの色は黄色っぽく、鈍く描くと光を感じる自然な印象を出せます。
幹を塗る
次に最も暗い桜の幹を塗ります
今回のような、複雑な絵では画面の中の明るさの段階が早い段階で決まってくることが重要です。
桜が最も明るく、次に背景、そして幹が最も暗いという大まかな色の関係を再現します
2. 常にやや明るめに描き進める
水彩画の基本は徐々に暗く徐々に鮮やかに描き進めることですので、初めはやや明るめ、やや鈍めに描いていきます。
また、今回のモティーフのように細かい描写をするのが難しいモティーフは画面全体の色の雰囲気を合わせていくことが自然に描くコツです。
通常ならば、
- 明るいゾーンは鈍く黄色っぽく
- 暗いゾーンはやや鮮やかに青っぽく
- 中間の明るさを鮮やかに
が基本ですが、このモティーフは全体が白っぽいので全体的に彩度を低く描き進めます。
これによって半透明な花の質感を表現できます。
3. 画面のやや暗めのゾーンに細かい描写を入れる
ピンポイントで桜に鮮やかな赤を塗っていきますが、鮮やかな色を塗る時にはいきなり広い面積を塗らないようにして、これまでに作った明暗の関係を壊さないように配慮します。
鮮やかな色は明暗の境界線付近に出ますので、良くみて描いていきます。
ただし、明るい部分の細かい形はあえて省略し、水彩画らしさを出します。
ハイライトの部分には、ここでは水で溶かさないホワイトを使います。
4. 境界を溶かしてピンボケを作る
暗い部分を中心に画面を濡らしてピンボケを作ります。
桜の花のようにリアルな細かい描写が難しいモティーフはピンボケを使いながら画面全体の大まかな色の雰囲気を再現すると自然な印象で描くことができます。
5. 仕上げ
「半透明な色を重ね塗りして色幅を増やす」、「細かいタッチを入れて形を刻む」、この作業を繰り返して完成度を上げます。
最後に全体のバランスをみて仕上がり。
こんな色を使いました
背景に使った色
下地には、「コンポーズブルー+アイボリーブラック」を塗りました。コバルトブルーやミネラルバイオレットも使いながら、だんだんと濃くしていきました。
桜に使った色
下地には、「ジョーンブリアン+バーミリオン+アイボリーブラック」を使い、暗い部分には、「ミネラルバイオレット+コバルトブルー+アイボリーブラック」を使いました。
ジョーンブリアン、バーミリオン、ローズマダー、ホワイトを使って鮮やかな部分を描き込んでいきました。
幹に使った色
アイボリーブラック
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
お役に立てるようでしたら幸いです。
こんな風に、デッサン、水彩画、アクリル画、油絵について、下記のページにて紹介しています。
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風景画の旅と題して、日本並びに海外の風景と自作の絵画を動画にしてYoutubeに投稿しています。
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