複雑な風景画を描きたいけど、”下絵を正確に描く”のは大変ですよね。特に大型作品ともなると。
”下絵を正確に描く”ことができ、彩色の際にも有効に使える方法がありますので、よかったら参考にしてください。
水彩画、アクリル画、油彩画などで風景画を描くとき、いきなり絵の具を塗り始めるプロの画家もおられますが、普通は鉛筆で下描きしてから彩色しますよね。
複雑な風景を描く時には、この下描きの出来具合が絵の仕上がりに大きく影響します。
風景画の”下絵を正確に描く”
ための『私の制作方法』
美大へ行くには必ずデッサンを徹底的に勉強する必要があるようです。
絵画教室などでも「デッサンが上手=優等生」で、長年に渡って鉛筆デッサンだけをやり続けている方もおられます。
こんな方達には、下絵の制作は簡単なことかも知れません。
一応私も、延べで2年程度ですが絵画教室でデッサンを学んだ経験があります。
ただ残念ながら、私はデッサンがあまり好き(得意)ではありません。
だから、鉛筆で下書きする時が苦痛で、彩色に移ると本当に嬉しくなります。色をつけて段々と狙った画像が浮き上がってくる時が一番の喜びです。
そんな私ですから、初期の頃にはこんなことがありました。
- 下絵の制作に時間がかかり、結局思うように描けない
- 色をつけている段階で下絵の不具合に気づいて困る
そんな折に、ある絵画教室でクラフト紙を使った下絵の制作方法を教えてもらいました。
詳しくは後述しますが、要は「ネタ元の写真」と「描くものと同サイズのクラフト紙」を用意し、それぞれにマス目を引きます。そしてそれを当たりにして、複雑な風景を書き写すというものです。
後は、クラフト紙からキャンバスなどに転写するだけです。
デッサンに、ブロックインと言って、最初は大きな塊・ブロックでもの捉え、その中に納めて行くことで、全体のバランスを取って正確に描く方法があります。
誰でも何か当たりをつけるものがないと正確に描くのは難しいようです。
特に風景画の場合は遠近があって、しかも多くの建物を描くことがあります。何か当たりをつけないと正確に描くのは本当に難しいです。
一方で、彩色画を描く人はたいてい鉛筆などで下絵を描きますので、デッサンを繰り返し実行することになります。
よって段々とデッサン力がついて行きます。ボチボチと進んで行きましょう。
大まかな手順は次の通りです
”下絵を正確に描く”
- 描きたいサイズのボードや張りキャンバスの準備
- ボードやキャンバスにクラフト紙を取り付ける。1面だけをテープで全長固定し、3面は仮固定にとどめ、開け閉めできるようにしておく。
- 元ネタの写真をプリントする(A4やA3サイズ)
- ボードの縦横比に合うように写真の描きたい部分を決める
- プリントとクラフト紙の両方にマス目を入れる
- マス目を当たりにしてクラフト紙に下絵を描く
- 下絵が出来たら、クラフト紙の下にチャコペーパーを敷いて、下書きをなぞってボードに転写する
- 転写したものが薄いようなら鉛筆でなぞっておく
- 彩色開始(クラフト紙を彩色面の裏側に回し、ボードにつけたままにしておく。)
- 彩色して消えた線を復元したいときは、再度チャコペーパーで転写する。
これから詳しく説明します。
①ボードや
張りキャンバスの準備
水彩画の場合
ボードに水彩紙を取り付けて水張りを済ませます。
水彩画は多量の水を使うため、水張りをしておかないと水彩紙が波打って大変みっともないです。
youtubeで水張りの仕方の動画を見つけましたので、参考にしてください。
アクリル画の場合
アクリル画は上記のものを使用しても良いですが、厚みを持ったボールドキャンバスが大変便利です。
また油絵で使うような張りキャンバスでもOK。
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ボールドキャンバスの厚みやサイズは色々あります。
油彩の場合
油彩には一般に油彩用の張りキャンバスや木製パネルが使われます。また上記のボールドキャンバスでもOK.
②ボードやキャンバスに
クラフト紙を取り付け
写真のようにボードの上面または側面にクラフト紙をマスキングテープなどで固定します。
固定する側だけ1cm位大きめにクラフト紙をカットしておきます。
クラフト紙とは荷造りなどに使用する紙ですので、薄くても十分な強度を持っています。
水にも強いですし、長期の伸び縮みも少ないようです。私は安価なロールのクラフト紙を使っています。
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1面の端部をテープで固定
③,④,⑤,⑥
写真とクラフト紙の準備して、
クラフト紙に下絵を描く
写真をプリント(A4やA3サイズ)したものは、ボードと縦横比が違うので、狙った画像の部分を決め、同じ縦横比にします。
次に、プリントとクラフト紙の両方にマス目を入れます。マス目を入れるは、描くときの当たりをつけるためです。
例えば塔はこのマスにこの大きさで、建物の並びはこのマスにこれくらいの大きさで、などという当たりがつけられるため、デッサンが苦手な人でも複雑な風景をほぼ正確に捉えることが出来ます。
描き進んだ後に大きなやり直しが出ることがありません。
マス目を基準に角度を合わせれば、遠近も正確に落とせます。マス目の大きさはキャンバスの大きさや風景の複雑度合いで決めてください。
こうしておくと、例え100号サイズの大キャンバスでも複雑な風景を写真に合わせてかなり正確に落とし込むことが出来ます。
⑦,⑧クラフト紙に下絵を
チャコペーパーで転写
次にクラフト紙の下にチャコペーパーを敷いて、赤のボールペンで下絵をなぞって転写します。
チャコペーパーとは、分かりやすく言うと大型のカーボン紙です。
カーボン紙と違うのは描いた線が薄く水で消える点です。
カーボン紙では線がボールペンで描いたように濃く出て消えないため、水彩画などで線を目立たさせたくない場合には相応しくありません。
ただ水で消えやすいので、線を残したい時には逆に鉛筆でなぞっておきます。
油絵やアクリル画の場合は、カーボン紙でも構いません。
ただし、赤いカーボン紙を使って、やや軽めに描くと彩色の際に線が目立ちにくいです。カーボン紙の場合は、線が乾かないと色が溶け出しますので、少し時間をとってから、着彩してください。
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ここで大事なのは、クラフト紙がボードの同じ位置にくるようにすること。
片面を固定しているとは言え、開け閉めすると紙がズレてしまうことがあります。
そのため、紙とボードの3辺にマークをつけておき、必ず写す前に位置を合わせてマスキングテープなどで仮固定をするようにしてください。
⑨,⑩彩色と再転写
これで下絵完了。後は彩色。
だだし、クラフト紙は剥がさずに裏返しておきます。彩色が進む段階で下絵が色で隠れてしまい、困ることがあります。
そこで、活躍するのがクラフト紙。もう一度、表に返して再現したいところを描き写します。
ここでも、紙の位置合わせには十分に注意してください。ある程度描き進んでいる段階ですので、特に注意が必要です。
また、彩色しているうちに描き足したいものや、書き換えたい箇所が出ることがよくあります。
そんな時にもクラフト紙に描きたし、描き変えて転写するだけです。暗くなったところには、白いチャコペーパーやカーボン紙を使って転写する手もあります。
さらに、完成後しばらく時間が立ってから、もう一度書き直したくなる時があります。
そんな時にも使えますので、完成してクラフト紙を剥がしても、大事に保管しておくことをおすすめします。これは私自身の経験です。
地塗り
アクリル画や油絵で行う地塗りについて説明しておきます。
下書きが終わった段階で、下書き線を残すために薄く全体に塗ることを言います。
ローシェンナがよく使われています。これを薄く溶かして塗り、乾かした後もう一度塗ります。
アクリル絵の具でアクリル画にも油絵にも対応できます。
もちろん、油絵に油絵具のローシェンナを使うのはokですが、アクリル絵の具の方が時短できます。
見えづらいですが、地塗りが終わった段階です。転写には赤いカーボン紙を使っています。
さあ、描くぞ!
100号の制作事例
”下絵を正確に描く”
この絵も説明した方法で描きました。ポルトガル・リスボンの風景(油絵)です。こんな複雑な風景でもほぼ正確に描くことが出来ました。
最初はアクリルで描きましたが満足出来なかったので、その上に油彩で描き直しました。油彩にする段階で建物の配置で気になるところを変えています。クラフト紙が活躍してくれました。
デッサンが苦手な私にもこんな風景が描けて嬉しかったです。
他にもいろんなカテゴリーの投稿をしています。
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Youtubeにも投稿
「風景画の旅」と言うテーマで、国内外の風景と自作絵画を動画にして紹介しています。
こちらもお立ち寄りください。お気に入りのモティーフが見つかるかも!
リスボンの絵と風景を動画にしてyoutubeにのせています。
よかったらご覧ください。