”アクリル絵の具の弱点”をご存知ですか?
例えば、アクリル画は、水彩絵の具のように水で溶かして描きます。
なので、水彩と同様に多めの水で薄めて描きがちです。
しかし、それはダメなんです。
3つの絵の具の違いからアクリル絵の具の正しい描き方を解説します。
アクリル絵の具、こんな苦労は即改善
私は、現在、油彩画を描いています。
水彩画から始めて、アクリル画、油彩画と順に画材を変えてきました。
なので、アクリル画を始めた時には、アクリル画も水彩画と同じように描けばいいのだろうと思っていました。
その頃、私は絵画教室に通っていましたが、絵の具について教室で教わることも、自分で学ぶこともなかったため、間違ったまま描いていました。
当時、アクリル絵の具で描く時、こんなことに悩みました。
- 描いている時、乾燥が早すぎる(メリットでもあるのですが)
- 描いている段階には色鮮やかでも、乾いた後に色が燻むことがある
- 水彩のようにジャブジャブに水を使うと、乾燥後に粉を吹いたようになる
例えば、
「色が濃いとマット(ベッタリ)に見える」、また「乾燥が早すぎる」という理由で、水を多くしがちでした。
そうした方が、やや霞んだ遠くの風景を描きやすかったのです。
しかし、気持ちよく描けたと思っても、翌日に絵を眺めると悲惨な状態でした。
やむなく何度も塗り重ねていました。
そして、原因がはっきりとわからないままに、これではダメだと思い油彩画に変えてしまいました。
こうなる原因は絵の具の組成の違いにあるとは知らず、あの時、きちんとnetで調べておけばと今になって後悔しています。
ただ、今は油彩を気に入っていますが、、、🤗
水彩/アクリル/油彩
絵の具の組成の違い
絵の具は、一般に顔料と媒材(接着材の成分)でできています。
- 水彩絵の具:
水➕顔料➕アラビアゴム - アクリル画:
水➕顔料➕アクリル樹脂エマルジョン - 油絵の具:
顔料➕乾性油
このように、違う材料が使われているのです。
なので当然、それぞれの特性があるのです。
少し遠回りになりますが、この際、三つの画材のおおまかな特性を知っておきましょう。
水彩絵の具を知る
まず水彩絵の具には、透明水彩絵の具と不透明水彩絵の具(ガッシュ)があります。
水彩画といえば一般的には透明水彩を指します。
水彩絵の具は基本的に薄塗りをする画材です。
水彩絵の具は、アラビアゴムが定着材の役割をしますので、紙に定着してはがれません。
アラビアゴムがたくさん(高濃度に)混ざっているものが透明水彩、少し(低濃度)なのが不透明水彩です。
要はゴムの部分を光が通過するわけです。
水彩画が透明ぽく見えるのは、顔料が透明なのではなく散らばっているだけなのです。
顔料がゴム分とくっつくので、水で薄めても定着します。そのため、大量の水と混ぜて淡い表現をすることも可能です。
ちょうど下のような様子です。
アクリル絵の具を知る
アクリル絵の具は「水➕顔料➕アクリル樹脂エマルジョン」でできています。
接着剤である”アクリル樹脂エマルジョン”とは、次のようなものです。
例えば、水に砂を入れてかき混ぜると濁った状態になりますが、そのまま放置しておくと砂は下に沈んでしまいます。
しかし、化学的処理をすることで濁ったままの状態を保たせることをエマルジョンと言います。
つまり、アクリル樹脂の粒が水中で沈まずに浮いている状態をアクリル樹脂エマルジョンと言います。
下の図のように、水分が蒸発すると固まります。その時、含んでいる水分の体積が小さくなります。
原液でも約1/4が水分です。
アクリル絵の具の場合、油絵のような表現なら水は加えなくてもよく、水彩画のような透明感を出したい場合は水を加えます。
大事なのは、この絵のようにアクリル絵の具はエマルジョンの状態を保った状態から水分が抜けて固まるということです。
油絵の具を知る
油絵の具は「顔料➕乾性油」でできています。
乾性油とは水分が揮発して固まるのではなく、化学反応で固まります。
なので、乾燥には時間がかかります。
ただ、乾性油は高い屈折率で光を透過するため、油絵の具は高い透明度を有しています。
また、下の図のように乾燥しても体積はそのままなので、描いている時と乾燥後の見た目の変化が少ないです。
アクリル絵の具の課題
アクリル絵の具は、水彩や油彩に近い質感も表現することができ、幅広い使い方に適用できます。
また、耐久性が高いという大きなメリットがあり、近年、広く使われている画材です。
ただ、課題もあります。
それを理解しておくことが大切です。
① 痩せる
アクリル絵の具は、油絵のように厚塗りすることもできます。
しかし先ほどの図のように、絵の具の水分が蒸発して乾くので、乾いた画面は描いている時よりも体積が減ってしまい痩せたように見えます。
平たく言えば、かっぷくが良かった人が、痩せて貧相に見えるってことです。
② 色が沈む
アクリル絵の具は濡れた時の「濡れ色」と、乾いた後の「乾き色」に差があります。
濡れていた時には鮮やかに見えていた色でも、乾くと少し沈んだ色合いになります。
その差は色の種類によって違うので、 慣れが必要です。
③ 薄める水を多くできない
アクリル絵の具を水彩のように多量の水を使って薄めてはいけません。
なぜなら、水を加えすぎると組成のバランスが崩れ、アクリルポリマーの分散が薄まります。
要はエマルジョンが崩れてバラバラになってしまうわけです。
そうなると分子の正しい再結合が妨げられ、安定した塗膜を形成できないのです。
アクリル絵具を水で薄める時は最大でも25%までとされています。
④ グラデーションが苦手
アクリル絵の具はパレットに出して放置しておくと短時間で固まってしまいます。
一方、油絵の具の乾性油は固まるのが他の絵の具と比べると大変遅いです。
油絵の具では、「ちょっと用事を済ませて、また後で描こう」なんてことは、全く問題ありません。それくらい違うという意味です。
油絵の具は固まりが遅いので、絵の具を画面上でも混ぜられます。そのため、簡単に微妙なグラデーションを作ることができます。
一方、水彩絵の具の場合には大量の水を使って描くことで固まるのを遅らせることができます。
さらに水彩では乾いてから水で溶かすことさえできます。
乾いたアクリル絵の具はもう溶けません。
なので、油彩、水彩ともに容易にグラデーションを作ることができるのです。
すぐ固まってしまうアクリル絵の具でグラデーションを作るには一定の技量と慣れが必要です。
アクリル絵の具の課題を解決するには
アクリル絵の具の課題を解決するには、とにかくメディウムを有効に使うことです。
色を薄めたい時、乾燥を遅らせてグラデーションを出したい時、厚塗りしたい時など、さまざまなメディウムが用意されています。
水彩や油彩との違いをメディウムで解決して、アクリル絵の具のメリットを活かしてください。
簡単に商品を紹介しておきますので、詳しくは画材店のページをご覧ください。
以下はホルバインさんの商品です。ご覧のようにたくさんの種類があります。
アクリル絵の具に混ぜて使うメディウム
<<絵の具を柔らかくしたい時>>
グロスメディウム:
つやと透明感が増します。
マットメディウム:
つやは控えめで透明感が増します
ペンチングメディウム:
つやが増し深みのある発色になり、定着力が弱まりません
<<透明色を不透色にしたい時>>
オペークメディウム:
明るい色調でマットな仕上がりになります
<<絵の具の乾きを遅らせたい時>>
リターダー/リターディングメディウム:
グラデーションを作りたい時などに便利です
粘土の違いで使い分けられます
さらっとさせたい時は低粘度のリターダーを!
<<エアーブラシを使用する際>>
ペンチングソルベント:
エアーブラシに使うためにアクリル絵の具を薄めたい時に使います
伸びが良くなり、細かく噴霧できます
<<透明な立体感のあるテクスチュアーを作りたい時>>
ジェルメディウム:
さまざまな種類がありますので、お好みのものを!
アクリル樹脂が入っていないので、定着力は弱まります
以上について、良い動画を見つけましたので、添付しておきます。
下のように使った時と使わなかった時の違いも確認できます。
最後に
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
いかがでしたか?
画材のこと、知ってるか、知らないかで、絵の出来が大変違ってきます。
私自身、これまでに散々泣かされてきました。
これからも勉強の日々です。
他にもこんな風に「アクリル画と描き方」ついて取り上げています。
こちらから確認してください。
油彩画、水彩画もあります。
他にも、いろんなカテゴリーのページがありますので、ホーム画面にも是非ともお立ち寄りください。