”誰でも使える絵画の構図理論”を知りたくないですか。
構図は、名画の中心的な要素です。
しかし、あんがい
絵の構図は感覚だけで決める
名画の見方がわからない
そんな方も多いのでは!
絵画の構図理論を実例をもとにまとめました。もっと絵を楽しみましょう。
目からウロコ!絵画の構図攻略法
理論を知り名画で学ぶ、絵画の構図
偉大なアーテストであり数学者でもあったレオン・バッティスタ・アルベッティは著書の中で、構図は絵画にとって2番目に重要な要素であると述べています。
ちなみに1番はドローイング、3番は色彩とのこと。
ドローイングとは線画や素描。
当然、絵画の巨匠たちも、絵の構図を練ることに力を入れてきました。
しかし巨匠たちは直感だけに頼って、優れた構図の作品を生み出してきたわけではありません。
もちろん、優れた画家が持つ、アーティスティックな直感や感覚は、アーティストのスタイルを構成する重要な要素に違いありません。
しかし、優れた構図の作品を描き続けるには、それだけではダメなのです。
画家たちは、どのような構図理論を用いてきたのでしょうか。
巨匠たちが用いてきた構図理論とは
これから述べる構図理論は、近年になって生み出されたものではなく、なんと古代ギリシャで生まれ、ルネッサンス時代などを経て受け継がれてきたものです。
調和比に基づく構図
構図による視覚の操作にはさまざまな方法があります。
しかし、これから述べる調和比に基づく構図のスキームほど過去のアート界に影響を及ぼしたものは他にありません。
当然、現代にも受け継がれています。
デザインにおける調和比は、あのピタゴラスの発見に端を発したものです。
紀元前6世紀に、あらゆる事象には数が内在していること、そして宇宙の全ては人間の主観ではなく数の法則に従うのであり、数字と計算によって解明できるという思想を確立。和音の構成から惑星の軌道まで、多くの現象に数の裏付けがあると気づいた。
ピタゴラスは楽器用の弦を使って、それを解き明かしました。
まず弦を叩き、それが振動している間に、弦に軽く触れました。ほとんどの場所では音が止まりましたが、特定の箇所ではクリアで美しい音色が響いたのです。
新たな、音色は右から左に弦を測ると、その弦の1/2、2/3、3/4の位置を触れた時に作り出されました。
私も若い頃にギターを引いていましたので、経験しています。
この心地よい音色は「ハーモニクス」または「倍音」と呼ばれます。
そして、不思議なことに、耳にとって心地よく感じられる比率は、目に心地よい感覚と同じだったのです。
絵画の巨匠たちはこの調和比を利用して画面を分割してきました。

長方形における構図線とは
長方形に14本の対角線を引くことで、簡単に調和分割を決定することができます。
対角線の交点によって調和分割の位置を決めることができるのです。嘘のようですが、そうなるのです。
いわば構図の音階ですね。

この構図線を利用すると、自然の中にある秩序体系を保ちながら、単純なものから複雑なものまで限りない構図のバリエーションを作成できるわけです。
残念ながら、名画おいてどのように調和分割が用いられたか、ほとんど記述されてないようです。
しかしながら、次のように利用されていることがわかっています。
- 主題やオブジェクトを特定の調和分割位置に置く
- 人物の目の位置を調和分割に合わせる
- 長方形の構図線に沿うように配置する
古代ギリシャ時代から19世紀前半まで、多くの絵画の巨匠達はピタゴラスが発見したこの調和比を利用して画面を分割し、普遍的なパターンで描写してきました。
美術館などで巨匠の絵を鑑賞する時、こんな目で見るともっと絵の良さを理解できるはずです。
お友達に自慢できますね。
名画に構図線を重ねてみる
調和分割の使用法をさらに深く学ぶのには、名画に構図線を重ね、構図を研究することが大事です。
名画に長方形の構図線を重ねて、アーティストがそれを利用したかどうか調べます。
利用されている場合には、具体的にどのように利用されているか調べます。
試行錯誤を伴うアプローチではありますが、名画の秘密を解き明かすことができます。
それではいくつかトライしてみましょう。
アンドリュー・ワイエスの例
この作品「クリスティーナの世界」は、ワイエスの代表作です。
足の不自由なクリスティーナが丘を這って家に帰るシーンを絵にしたものです。
ワイエスはある日この光景を見届け、大きな衝撃を受けて描きました。
通常、人物画の場合には、表情で感情を描き表しますが、この絵では正面でなく背後からの姿とし、人物を風景に重ねてドラマ化しています。
素晴らしい絵でしょ!
それでは、構図は?
なんと1/2のポイントが、ちょうど目の位置にあります。
さらに女性の体は対角線に沿って描かれ、ほぼ体全体が上下1/4のラインの中に配置されていました。
私自身、線を引いてみて本当に驚きました。嘘のような真実!
女性がまさに動いているように感じられます。
構図の大切さが身に沁みました。

アルフレッド・シスレーの例
シスレー作品の中では、私が最も好きな作品です。
とにかく、構図が素晴らしい。
目線は並木の奥に向かって吸い込まれ、そこから弾けるように上に向かい、葉っぱの茂みに移ります。
本当にダイナミックですね。
実は、以上はこの絵に構図線を入れる前に私が感じていたことです。
それでは構図は?
遠近法の消失点がちょうど右下の1/3のポイント付近にあります。
その点を中心として、四方に放射された線で絵が巧みに分割されています。
その分、上部の茂みが大きくとられて、大変迫力のある絵になっています。
また左右の部分は空でほぼ2分割されていて、余計に茂みの大きさが際立っています。
誰でも、使えそうな構図ですね。

アルフォンス・ミュシャの例
この作品はミュシャ晩年制作の、スラブ叙事詩の1作品です。
ポスター画家で名声を築いたミュシャですから、構図には十分な見識を持っていたはず。
それでは、構図は?
複雑な絵ではありますが、まず3本の赤い線で上下4つの長方形に分けることができます。
この枠内に巧みに人物や建物を配置し、下段はクリアに描き、上段に行くほどぼかしを入れています。
また上下2分割してできる4本の対角線(黄色)に沿って、流れるように人物を配置しています。
この二つを組み合わせることで、絵に動きを持たせ、遠近を表現しています。
歴史の長い時間までも感じさせる絵ですね。

田中一村の例
アカショウビンという色鮮やかな鳥と、亜熱帯に見られる大きな葉っぱを組み合わせた作品で、田中一村の代表作と言って良いでしょう。
掛け軸のように上下に細長い絵ですが、構図は?
この絵は、まず対角線で区切られる4つの部位に分割することができます。
上部と左の三角形は、大きな葉っぱで締められています。
右側の三角形には、薄い緑色の葉っぱが置かれ、下の三角形には、アカショウビンと岩山が。
黒い葉っぱの面積を大きく取ることで、画面に迫力が生まれています。
ちなみにアカショウビンは1/4の横線(赤色)の上に乗っています。

川瀬巴水の例
この作品は巴水作・東京二十景の1作品「芝増上寺」です。
東京二十景の中でも極め付けの逸品と言えるでしょう。
「シンシンと降る雪の白」と「建物の赤」との鮮やかなコントラストが大変魅力的です。
「関東大震災後の、巴水の思いが見るものの心に突き刺さる」、そんな絵ではないでしょうか。
それでは、構図は?
この絵では、雪が積もって垂れ下がる松の葉が強い印象を与えています。
それらの複雑な配置は、図のように画面を2分割してできる対角線とよくマッチしています。
さらに、人物も1/2の対角線に沿って、同様に傾いて配置されています。
これらの配置が静かな雪の夜の場面に微妙な動きを与えています。
松の葉は雪が落ちて今にも跳ね上がりそうではありませんか。

最後に
いかがでしたか?
驚きでしょ!
あなたも、ぜひともいろんな名画にトライしてみてください。
きっと巧みな配置に驚かれるはずです。
またお気に入りの構図を見つけたら、自分の作品で試してみましょう。
きっと見違えるような作品になるでしょう。
しかし、この構図線はあくまでもベーシックなものです。アーティストたちは、これをベースにさらに改良したものを生み出してきました。
奥はまだまだ深いです。
他にもこんな風に「絵画上達のポイント」について取り上げていますので、参考にしてもらえれば嬉しいです。
また、いろんなカテゴリーのページがありますので、ホーム画面にも是非ともお立ち寄りください。
ペインティングレッスンという本を参考にさせていただきました。